第2話森を守る狼?と穢れ
近づいて気付いたこと。狼の体全体から、なんか黒いモヤモヤが出てたんだ。何だろうこれ?とりあえず、このモヤモヤは後にして、怪我のこと聞かなくちゃ。
「フウ。どこけがしてりゅの?」
「怪我?怪我じゃないよ。穢れで具合が悪くなっちゃって、もしかしたら、このまま死んじゃうかもしれないんだ。だから僕、助けてって、誰か居ないかと思って探してたんだ。そしたらハルトがいたの。」
え?穢れ?死んじゃう?僕の思ってたものと違うことを言われて、軽いパニックだよ。穢れって何?死んじゃうって…。そんなに重症なの?
フウに詳しく話を聞くと、この狼の種類はロードファングって言って、狼の王様で、この森の全ての狼をまとめてるんだって。それだけじゃなくて、他の生き物も、いろんな災いから守ってくれる、とっても優しい狼なんだって。あとね、このロードファングとか動物って言わないで、魔獣って言うみたい。本当に本の世界みたい。
それで穢れっていうのは、フウの説明によると、悪いエネルギーみたいなもので、それは花や木を枯らしたり、湖にその穢れが発生すれば、湖はドロドロの黒い水に変わっちゃったり、とっても悪いものなんだって。それがたまに、魔獣を襲う事があるんだって。そうすると、力の弱い魔獣はすぐ死んじゃうんだって。
このロードファングは、その穢れを自力で払う事が出来るくらい強いんだけど、今回はロードファングの仲間がたくさん、穢れに襲われちゃって、それを祓ってたら、あまりの穢れの多さに、どうすることも出来なくなっちゃったらしい。
それでまたこの穢れが、仲間をまた襲わないように、ここで最後を迎えようとしたらしい。
ちょっと待って。穢れが襲うって、ここに居る僕達も危ないんじゃ。辿々しい言い方しか出来ない僕が、何とかフウにそう伝えたら、あっそうかって。だめじゃん!少しここから離れた方が良いんじゃない。フウなんて、ロードファングの上に座っちゃってるけど。
「でも、僕離れたくない…。僕、お友達だもん。」
フウは本当に、このロードファングが大切なんだね。でも、僕じゃどうにも出来ないよ。穢れなんて今日初めて聞いたし、こんなに強そうな魔獣がどうにも出来ないんじゃ。
でも、フウの姿見てたら、可愛そうになってきちゃった。だって目に涙溜めて、小さい手でロードファングの体、なでなでしてるんだもん。僕それ見て、ちょっとだけならって。
確かに汚れ(穢れ)は怖いけど、フウが今触れてるんだから、僕も今なら触れるんじゃ。それにフウのなでなで見てたら、お父さんとお母さんのこと思い出しちゃった。
小さい頃の記憶。よく2人とも、僕の頭なでなでしてくれたんだ。僕はそれがとっても嬉しくて…。僕はロードファングとフウに近づいた。
「フウ、ぼくなおしぇない。ごめんね。でもいっしょ、なでなでしゅるよ。」
「ん。ありがと。」
僕はロードファングの頭を、そっとなでなでしました。ごめんね治してあげられなくて。僕もフウみたいになでなでしか出来ないけど、これで少しは落ち着いてくれたらいいな。
だいたいこの穢れってほんと何?悪いエネルギーって言っても、襲ってこなくたっていいじゃん。そう思ったらなんかムカムカしてきちゃった。それでね、なでなでしながら、
「こんなけがりぇ、なくなりぇばいいにょに。」
そう言ったんだ。そしたら急に体の中がポカポカしてきて、それがどんどん暖かくなって。何、何が起きてるの?本日何度目かのパニックになってたら、その暖かいものが、ロードファングを撫でてた手に、集まり始めたんだ。それからその暖かいのが手から抜けていって、ロードファングに入っていった。そう思っただけかもしれないけど。
次の瞬間、ロードファングがポワッと白く輝き始めて、そしたら今までロードファングを覆ってた黒いモヤモヤが、少しずつ消え始めたよ。僕はそれをじっと見つめて。光が収まった頃には、黒いモヤモヤのない、落ち着いた寝息を立てて寝ている、ロードファングがいました。
「フウ、どしたの?」
「嫌な感じなくなった?ハルトが治した?」
え?僕なにもしてないけど?と、そう言いかけた時、急に力が抜けちゃって、僕はロードファングに寄っかかるみたいに、パタンて倒れちゃった。そのまま意識がなくなっていって、フウが僕の名前呼んでるのが分かったけど、僕が起きてられたのはそこまでだったよ。
「ん?」
目が覚めて最初に思ったこと。ここどこ?僕はふわふわな、葉っぱがたくさん集まった布団みたいなのに寝てました。どうしたんだっけ?なんか穢れとか、妖精のフウとかロードファングとか、全然あれ夢?何て考えたけど、周りを見渡せば、あの花畑の真ん中だった。やっぱり僕がここにいるのは、夢じゃないんだね。
「起きたか?」
ビクってして後ろを見たら、さっき穢れに襲われて、死にそうにしてたロードファングが、今は堂々とした姿で、僕の後ろに立ってました。それから、ロードファングの頭に乗っていたフウが、僕の胸に飛び込んで来て。
「ハルト良かった。ハルト具合悪くない?ハルト体痛くない?」
次々に質問してくるフウは、泣きそうな顔してて、随分心配かけちゃったみたい。ごめんね。でも、僕も何で倒れたか分からないんだ。それと、
「りょーどふぁんぐは、もうげんき?」
「ああ。」
そう良かった、元気になって。フウもよかったねって言ったら、ニコニコすごい笑顔で笑ってたよ。
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