穢れを祓って、もふもふと幸せ生活
ありぽん
第1話プロローグ
「ふえ?ここどこ?」
周りを確認する。さっきまでは高いビルが立ち並び、車が激しく往来している場所に居たはず。それなのに、強い光に包まれ目を閉じて、次に目を開けたときには、今まで自分が居た場所ではない、全く違う場所に立っていた。
目の前には小さな湖があって、周りは木々に覆われていて、しかもその木1本1本がかなり大きい。ここは森?
「うーん、ここ、どこらりょう?………。ありぇ…?」
何かおかしい。言葉が思ったように出てこない。呂律がうまく回ってない感じ。うーん。あの光のせいで、言葉がうまく話せなくなったとか?まさかね。
とりあえず、湖の様子でも見てみようと思って歩き出す。え?何か体の動きもおかしな感じがする。僕、スポーツはけっこう得意で、こう体を動かしたりするのは何てことないはず。それなのに本当に僕、どうしちゃったの。
ただでさえ突然見たことのない場所にいて、けっこう不安なのに、言葉も体の動きも悪いなんて。
それでも違和感を感じながらも、湖のほとりまで行き、湖の中を覗き込む。とっても透き通っていて、綺麗な水だった。でも、すぐにそんなことを言ってられなくなった。
「え?だりぇ?」
湖を覗き込む顔が、水面に映し出される。そしてそれはいつもの見慣れた自分の顔じゃなくて、全然知らない幼児の顔だった。2歳から3歳くらいかな?僕は慌てて自分の顔を触った。
「?」
ここでも違和感。そっと顔を触っていた手を、自分の目の前に。
「ちいしゃい!!」
他の体の部分も確認する。手も足も体も顔も、全部が小さくなっていて、それはまさにさっき水に映った、男の子そのもの。洋服だってさっきまでの学生服じゃない。本で読んだことある、異世界に出てくるような、昔のヨーロッパとかで着てた服みたいなのに変わってた。
「なにが、おきてりゅの?ぼく、ちいしゃくなっちゃった…。」
これって、さっき読んだって言った、異世界へ来ちゃうって話と同じ事が起きてる?僕、異世界へ来ちゃったの?
確かに今の僕を、元の世界で心配してくれる人はいないけど、それでも急に異世界に来ました、なんて言われても、これからどうすればいいの?
湖のほとりで、1人でわたわた慌てていたら、どこからか、声が聞こえてきた。それはとってもとっても小さな声で、この静かな場所だから、やっと聞こえるような声だった。そしてその声は、助けを求めていた。
「誰か助けて…。僕の大切なお友達。」
大切なお友達…。何かあったのかな?
「だりぇ?どちたの?」
どこに居るか分からない声の主に向かって、僕は声をかけた。だって何か困ってて、僕がお手伝い出来ることがあるなら、手伝ってあげたいし。まあ、小さい子供になっちゃってる今の僕に、出来る事は少ないかも知れないけど…。
どこに声の主が居るのか探してたら、花が咲いてる所から、今の僕の手のひらに乗っかるくらいの、羽の生えた小さな男の子が、僕の方に飛んできた。
「僕の言葉が分かるの?」
「うん。どうちて?」
不思議な生き物にちょっとドキドキしながら、僕はその生き物に聞き返した。
「だってね、人間は僕達の言葉分かんないんだよ。君、人間でしょう。」
「うん(たぶんね)。ぼくのなまえ、はりゅと。よろちくね。」
「はりゅと?」
「うーん。りゅじゃなくて…、る!」
る、とか、それだけならちゃんと言えるのに。何かもどかしいな。
「ハルト?そっか。ハルト、僕の名前フウだよ。僕は花の妖精。宜しくね。」
それからフウが教えてくれたのは、ここからちょっと森の奥に入った所に、花がたくさん咲いてる場所があるんだけど、そこにフウのお友達が、怪我だか具合が悪いだか、とにかく体の具合が悪くて、倒れてるんだって。それで誰か助けてって言ってたんだって。
僕が行っても何も出来なさそうだけど、でもフウとっても悲しそうな顔してるし。見に行くだけ行ってみるかなあ?もし怪我とかだったら、僕の今着てる洋服に付いてる、バンダナ?みたいなので、怪我のところ巻いてあげても良いし。
「じゃあ、おともだちのとこ、いこ。」
僕がそう言ったら、フウとってもにっこり笑って、こっちだよって案内してくれた。本当に嬉しそうで、すごく友達のこと心配してたのが伝わってきたよ。
でも、小さい体だと、こんなに歩くの大変なの?慣れてないからか、フウに一生懸命に付いて行くけど、すぐに疲れちゃったよ。まだ着かないの。
フウのこの木の向こうって言葉聞いて、なんか凄く安心しちゃった。木を抜けて出た場所には。
「ふわあ、しゅごいね。」
辺り一面、いろいろな色の花で埋め尽くされた、綺麗な綺麗な場所でした。とってもいい匂いするし。こんなのはじめて見た。
「ハルト、こっち。」
フウに案内された場所は、花畑の中心。そこには、大きな大きな黒い、狼みたいな生き物が、ハアハア呼吸しながら横たわってた。僕一瞬、ビクってしてその場に止まっちゃったよ。でも、フウは全然怖がらないで、心配そうにその狼?に近付いて、お腹の上に座った。さすが友達。
フウが大丈夫なんだから、僕だって大丈夫なはず。僕はそっと、狼?に近づいた。
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