タイチを想う者達

 時を少しさかのぼり、タイチが温泉に入る前。

 女性陣が温泉に入ろうと向かっていた。






「チィーーヒヒヒヒヒヒ!!! ……チィーーヒヒヒヒヒヒ!!! …………チィーーヒヒヒヒヒヒ!!!」


「うわぁあ……凄い笑ってるよ。僕、怖いよぉ」


「ボクも”金”を利用してきた立場ですけど。ここまで”金”に左右されているのを見ると、止めた方が良いのでしょうか……」


 壊れたラジオのように不定期に、”無手”と合わせて”仙術”でも賭け金を手に入れたチィェンの笑い声が止まらなかった。

 目が”金貨”のままで戻らず、だらしない顔をし続けているのにガンとシンが怯えている。




「ポリポリ。……ポリ……ポリポリ」


 こういった時に、まっさきに叱咤するはずのホンは”おこぼれ”の≪帝都ムーダンに行ってきました・クッキー≫を両脇に抱え、完全に無視していた。


「ポリポリ、美味しいね! ホンお姉ちゃん!」


 食べきれない程の”おこぼれ”の”おこぼれ”を手に、クゥイが笑っているのだけが癒しだった。






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「あら!? この宿だと聞いておりましたが、今からですか? 奇遇ですわね」


「ア゛ァ~~ハッハッハ! 憎きタイチの女達ね! アタクシはジェーン・リトルゲート! またの名を”災厄カラミティ”ジェーン。ジェーンと呼んでね」


 女性陣が温泉に入ろうとすると、極東の島国”洋露波ヤンルーブォ”の国王の娘、ロゼ・レオニダスとジェーンと遭遇。




「あらら、タイミングがえと言おか。奇遇やね」


「ほ~~。皆様、お揃いで。奇遇でして~」


 西欧の列国”大和ダーフォ”の特級妖魔ヤオモ九尾ジゥウェイ”のシロと吉野ヨシノよし子ヨシコまでも合流する。






 何故、明日も戦うかもしれないタイチ達と会うかもしれない場所、ここに集まってしまったのか?



 それは、ここ、≪老舗旅館・桃源郷≫自慢の仙力シィェンリー回復に効果の有る湯として名高いからだ。

 ”無手”と違い”仙術”はの消費が激しいために、と顔を合わせる危険を冒してでも入りに来る程の名湯なのだ。




 言い換えれば、【仙術シィェンシュ】を【神技シェンジー】まで使える程の強者達が、”武器”に出場するまでに全回復するために訪れている。






 ”武器”で最有力候補のタイチを倒すために、万全を尽くしに来たのだ!!!






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 __『おうおう! 流石は優勝者だ! 服を脱いでも強いと分かる筋肉! 素晴らしい!』


「さっそく、お父様がタイチ様と交流してるみたいですわね」


「ほほう! シロちゃん達も、あわよくばと思とったけど、ソチラさんもやな」


 ロゼは父、アレクセイがタイチを自国に、活動拠点を自国に勧誘することつもりであることを知っていた。

 シロ達も仙力の回復も目的であるが、タイチと何らかの接触、交流を持つ目的でココに来ていた。




『勇者や英雄は、タイチの世界で言う”核ミサイル”なのだ。跳び抜けた”個”は全てを蹂躙する。いくら集まっても”軍隊アリ”が”勇者ゾウ”に敵わぬようにな。この大会は、それを他国に所有していることを、威力を示すための催しでもあるのだ』




 以前に皇帝ダオが語っていた言葉。

 この世界に迷い込んだ”迷い人ミィーレェン”であるタイチに帰属する国家は無い。

 他国からしてみれば、誰のモノでもない”核ミサイル”が道端に落ちている状況なのだ。






「ムム!!? 大変です! わたしの【占い】で国の”吉兆瑞気”と出たタイチさんが、他国に行ってしまいます!」


____じょうに! 残念ですが!! こればっかりはタイチ様の意向ですから。私達には、何も出来ません」


「ユーとシー姉様が懸念することは、。でもね、大丈夫。タイチ様を、この国に留める策は打ってあるわ。お父様が」


 で来ていたシー達、皇女達がタイチの流出の可能性に焦っていた。




「ボクの眼が変じゃなければ、アレって……シーさんですよね? アレで忍んでいるつもりなんですか?」


「駄目ですよぅ。こういうのは、知らないフリをしてあげるのがマナー、うふ、ですよぅ」


「ジィェンママぁムーチンが、そう言うなら。ボクは優しいので、無視しますね」


 持って産まれた気品、カリスマのせいで、になっていないが、来ているのだ。






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「シー姉様とユーは、覚えてる? タイチ様が、お父様と面会している時の雑談」


「確か、国についての話でしたね。難しくて、わたしでは理解しきれませんでしたけど、”民主主義”だの”王制”だの。お父様としていましたね」


「お父様とタイチ様は気が合うようですね!」




 __『ガッハッハハ! さあ、グリムの所用は終わったな。次は俺の話を聞いてもらおうか!?』




「お父様の考えは、。”核ミサイルタイチ様”の流出と____シー姉様の弱点を補う。一石二鳥、一挙両得の考え。お父様と”国政”へのタイチ様なら、問題は無いわ」


「シー姉様の弱点? ”仙術”でも、そうでしたけど。策や罠、”搦め手”に弱いところでしょうか?」




 __『!!?』






「タイチ様を国に繋ぎ止め、シー姉様の弱点を補う最良の策。それは____よ!」






 皇帝は純粋に雑談のつもりでタイチと話していたのだが、賢い次女のルイには、こう聞こえていたようだ。






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 極東の島国”洋露波ヤンルーブォ”の国王、”獅子王”アレクセイ・レオニダスのタイチ懐柔策が聞こえて来たことで、女性陣が一斉に自分と周囲を比べる。

 タイチのと自分が一致するのなら、それは”核ミサイルタイチ”を手に入れることに一役買うことが出来るからだ。




「タイチちゃんが……タイチさんが、居なく……遠く離れちゃう」


「うふ、うふふ、うふふふふ。何処までも付いて行きますよぉぅ」



「あわわ、私、と、タイチ様が……こ、こ、ここ、婚姻!?」


 両親の店が在るので離れられないツァンが不安がり、何処までも付いて行く覚悟をジィェンが決め、妹の考え過ぎの発言に動揺するシー。




 __『は、どうだ!??』


 一斉に、鋭い視線が行き交う!




 __『俺のロゼは妻に似ているからな! 成長すれば、デカくなるぞ!!!』


「お父様!!? 下品ですわよ!!!」


 言葉では怒っているが、アレクセイのフォローのおかげでタイチにアピールできたことに、幼いながらも勝ち誇っている!



「やったー! 、ガンちゃんが1番だよ!!!」


 負けじと、世話になっているツァンなどの為に、ガンが猛アピールをする!



「ムム!? 聞き捨てなりませんね! シー姉様だって小柄ですけど結構、大きいですよ!」


「おおおおお!!? ユー!?? なんてこと言うんですか!?」


 完全な善意で、で来たことを完全に忘れているユーが姉であるシーの個人情報を暴露する!!




「シロちゃんの”属性”は”幻”やさかい。大小も、髪の長さも思いのままやで~~!」


 しっちゃかめっちゃか、上へ下への大騒ぎ、女性が三人も居ればかしましいと言うが、ちょっとした騒動に発展する!






「うおおおおお!! ボンバーーーー!!!」


「「「うわーー! 爆発したーーーー!!?」」」


 後日、皇帝がで頭を痛める程の騒動に発展する……。






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「シー、ちょっと良いか? 話が有るんだが」


「え!?? ですか!?」


 妹に変な事を吹き込まれたせいで、温泉上がりのタイチに話しかけられただけで緊張が隠せずにいた。




だ。シーの父親、皇帝に話が有る」


「お父様に…………婚約の申し入れ大事な話




「”縛り”について問題が__「気が早すぎます! うおおおおお!! ボンバーーーー!!!」


 勘違いしたシーが、顔を真っ赤にして走り去ってしまった。




「__あり、そうだから。試合前に話が、したかった、んだが……」






「……何なんだ? いったい」


 ただただ、タイチは困惑するだけだった。






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 宮廷の宝物庫で、問題が起きていた。




「? ここにも何か無かったか? あそこにも何か……」


「も~~、ヤダぁ! ? 明日、”武器”で使うから。シーちゃんが持って行ったじゃない!」


 見回りの兵士が、宝物庫に在るはずの”神器”が無いことになっていた。



「あ~……。そうだったな。シー様が、お使いになるから持って行ったんだったな」


「そだよ~。アレもアレも、アレも。シーちゃんが持って行ったんだよ。


 兵士は、隣で荷物を抱えた相手のことを、巡回に戻るのだった。






 この時、持ちだされた”神器”は三つ。




「”無手”では【武道】などという卑怯な手で負けはしたが、条件さえ同じなら____俺が勝つに決まっている」




 ”乾坤圏”、”混天綾”、”風火輪”の






「”武器”ではで、俺が上だと思い知らせてやるぞ! コレエダ・タイチ!!!」


 タイチが持つ”神器”が”虎杖丸いたどりまる”の、ということをフーが明日に、”武器”に備えていた。






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