”極真武”・”武器”開幕

 ~~”極真武ジーヂェンウー”【縛りルール】~~



 ・【神技シェンジー】の使用は一度きり。


 ・頭上の球体による体力や仙力シィェンリーの回復は任意で行えるが、回復量は一試合に体力が本人の分、仙力が【神技】一回分なので注意が必要。


 ・公正を期すために大会期間中の仙力回復は球体からの回復と以外は出来ない。これはを遥かに超えた【仙術シィェンシュ】を使うことを抑制するためである。


 ・勝敗は気絶を含む戦闘不能、降参が認められているが、八百長などの防止を目的とした【縛り】の効果で、選手は常に””戦うことを強いられるため、負けを認めない限り降参は出来ない。




 ~~”武器”限定【縛り】~~



 ・全ての武器、防具、道具の使用を認めているが、あらかじめ仙力が込められているモノの持ち込みは【神技】一回分まで。回復用の仙石シィェンシーや”玉簪たまかんざし”のようなモノの過剰運用による本人の能力を超えないためである。






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「何だ! 何だ!? だらしないだろがい!!」


「「「「「頭、が……痛っつつ……」」」」」


 俺を含む男性陣が、グリムを除いて二日酔いで苦しんでいた。

 俺の”武器”の優勝の前祝いだとばかりに、盛大に行われた飲み会で、浴びる程の酒を飲んだというのにグリムだけがピンピンしていた。




 飲み会が終わった後、すぐさま俺の”銃”を改良して開幕に間に合わせたのだから、流石はドワーフだと感嘆するしかない。






「はいは~い! 偉く、賢いボクの【解毒ジェドゥ】を受けたい人は並んでくださ~い! ”洋露波ヤンルーブォ”や”タルワール”では【解毒アンチドーテ】でしたか? どちらでも良いですね。とにかく、大事な大会を前に、二日酔いになった人は並んでくださ~い」


 俺の前祝いで二日酔いになったので、俺の陣営から救護班としてシンが【解毒】を掛けるべく、酔っ払い達を並ばせていると……。






「コレエダ・タイチ様。お父様の皇帝”光武グゥァンウー帝”ダオが、お呼びです。【解毒】が済み次第、お越しください」


 シーの妹、シーと比べて大人びた雰囲気の少し茶色を帯びた長髪を後ろで縛っている帝位継承七位のルイが、俺を呼びに来た。






 、シーが俺の顔を見ると逃げるので皇帝と繋ぎを付けられなかったから、強引だが”策”を講じたかいが有ったようだ。






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 通された、ちょっとした会議室で皇帝ダオが静かに、宿からの請求書を眺めながら怒っていた。


ちんは確かに、大会中のタイチ達の衣食住に不自由はさせないと言った。だが____工業用のアルコールでも無事なグリム王に、浴びる程の高級酒を飲ませて良いとまでは言っていないぞ」


「お父様の御怒りは、。明細を見た時、私も驚いたもの」


 シーからの目立たない形での面会が出来ないのなら、面会するための理由、顔を合わせてもだけの理由が必要だった。




「こうして、皇帝と会話をするのに必要だった。正規な手続きを踏んで、面会したのでは。






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「”球体”が、”縛り”が作用しないことが有ったとはな。……それでか、”武器”の出場者が例年よりも少なかったのは。”仙術”に出場した者は軒並み”武器”にも、なのだが……。予選で傷つき、ソレが癒せず出られない。そして、それを隠したが居ると、タイチは言うのだな?」


「お父様!? そんなことが出来るのは、”極真武”の運営を任されている兄様! ノン兄様だけです!!」


「ルイ。、断定するのではない。今は”縛り”がシーとポンチャイだけが変だと分かっているだけだ。しかも、本人達にはデメリット不利益が無いと来ている。騒ぎ立てたところで、大会は中止に出来ても、追及も断罪も出来ん」


 皇帝の言う通り、証拠も無く、本人達に明確なデメリット不利益が無い状況で犯人捜しをしても罪に問うのは難しいだろう。




「して、タイチはちんに何を望む? こうして怪しまれずに会う口実を作ったからには、何かしらの”策”が有るのだろう。まさか、単に大会の中止を望むのなら、普通に会えば良いだけだからな」


「中止は、望んでいない。は良くないからな」


 既に俺は、テスラとニーナの事情を知っている。

 今回の大会で一度も優勝できなかったとしても、ただ一つの”媒介”さえ持ち帰ることが出来なかったとしても、不完全燃焼では彼らは納得しないだろう。




 それに俺は___






 ___”武器”で優勝するのが、!!!






「俺の”願い”は大会を、”極真武”を最後まで問題なく終わらせること! その為なら、誰であろうと倒してみせる! この身が、どうなっても構わない! その為に、皇帝には組み合わせを操作してもらいたい」






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「中止はちんも望んでいない。確かにタイチの言う通り、でポンチャイに、トウコツかテスラを当てれば怪我が少なく済み、”狂い”を誤魔化せるかもしれぬが……」


「シーには、俺を当ててくれ。”仙術”のように簡単に行かないだろうが、”狂い”に気付かせずに勝ってみせる」


 ”縛り”から解放されていると思われる二人が、共に本選からの出場なのが幸いした。

 二人には悪いが、早々に負けてもらうことで”狂い”が露呈しないように出来る。



「大した自信だな。親の贔屓目ではあるが、シーは強いぞ。宝物庫から”神器”も1つ持ちだしている。それに__」


「俺が、テスラかトウコツが、本選に出場できなかったら意味が無い」


「__その通りだ。もし、条件が揃わねば、その時点で中止だ。本選で、露呈する程の大怪我を負っても、それは同じだ。タイチの”願い”は叶わぬ」


 トウコツはともかく、テスラが本選に出場できないとは思っていなかった。

 実際に何度も、”無手”と”仙術”で戦ってきて、テスラの実力は分かっている。




「俺が本選に出場して、訳が無い。アイツは、テスラは強いよ」






「言い切ったな。完全な不正と言わんが、ちんはタイチの”願い”を叶えるのだ。代わりに、ちんの”願い”も叶えてもらうぞ。嫌とは言わせん」






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「コントン。”武器”に出る必要は無い。勘が良い奴が、そろそろ”縛り”の”狂い”に気付くはず。確実に大人しくしていろ」


「それでは、”無手”や”仙術”の時のように組み合わせによっては、問題なく終わってしまう可能性が残るのでは? 無茶をしてでも、くらいに仕掛けねば」


 ノンの狙いがシーではなく、タイチに移ったことを気にも留めずにコントンが口を挟んでいた。




は決まっている。それは決勝に進出したヤツだ。タイチが進出したなら、その相手。シーが問題なく進出したなら、その相手に【狂化クゥァンファ】を掛けろ」


「少々、強引ですね。確かに決勝は別日。今日でなく明日。深夜にでも襲撃すれば、【狂化】を掛けられるでしょうが。襲撃となると、騒ぎが大きくなります」




「こちらの思惑、関与が露呈する可能性が有る危険な賭けだが。それだけの価値が有るヤツだ」


「そこまで言い切るとなると、決勝に行くかたの見当があるのですね?」






「ああ、ヤツなら確実に決勝に勝ち上がるだろう___






 ___ならな」




 奇しくも、タイチとノンの見解が一致した瞬間であった。






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