”仙術”予選~”縛り”~

ごわがったぁぁあぁ!!! 怖かっだよぉぉお!!! テスラぁぁぁああ!!!」


「__っ!? だから、大きな声を…………そんなに怖かったのなら、抵抗せずに”降参”すれば良いではないか? リトルゲートじょう


 試合が終わり、一目散に子供のように泣きじゃくりながら、ジェーンがテスラにしがみついている。

 二日酔いのせいで痛む頭を押さえながら、慰めるように抱き、疑問を返していた。




「だっでぇぇええぇ!! アダクジの【神技シェンジー】は、相手が必ずするのよ! あと! ジェーンと呼んでよ!!!」


 __選手は常に””戦うことを強いられるため、負けを認めない限り降参は出来ない。



 ”縛りルール”により、万が一にも勝てる可能性が有ると思っているジェーンが”降参”出来なかったのだ。




 というか、撃たれたら爆発四散したのかよ!!?








「ジェーンとかいうむすめの負けん気が強いせいもありますが、タイチ師父シーフーも悪いですよ。あそこまでの威力はでした」


「確かに女性に手を上げるのは性に合わないが、『いざとなったら余計なことを考えるな』と教えられている。”仙術”で勝ち上がるのに、必要な経験と練習だ」


 女性に対して、過剰な【仙術シィェンシュ】の威力だったと、フェイ・ランが注意しているのだと思った。




「女性? 戦うからには男も女もないでしょう? 相手が子供でも、必要なら倒すまでです」


 意外とフェイ・ランはのようだ……。






 ーーーーーー






 __・頭上の球体による体力や仙力シィェンリーの回復は任意で行えるが、回復量は一試合に体力が本人の分、仙力が【神技】一回分なので注意が必要。


「私が注意しているのは使についてです。単純な【仙術】で【神技】並の威力を出す。燃費が悪いでしょう。体力や怪我については、試合が終われば全快しますが、仙力は違います」




 __・公正を期すために大会期間中の仙力回復は球体からの回復と以外は出来ない。これはを遥かに超えた【仙術シィェンシュ】を使うことを抑制するためである。


「少し先の話、”武器”の話も絡みますが。タイチ師父シーフーも、ご存知の”玉簪たまかんざし”。ああいったモノを持ち込んで使えば、容易に限界を超えた戦いが出来ます。試合は、あくまでもが用意できる範囲でしか認められません」


『この世界の勇者、英雄と呼ばれる人ですら、1回の【神技】で仙力を使い果たして気絶するか死ぬ程なんですよ』


 前にリウから言われたことを思い出しながら、”極真武ジーヂェンウー”では先輩であるフェイ・ランの忠告を聞く。

 一日に二度以上の【神技】を使える俺やシーが異常なだけで、通常は一度でも多いくらいの仙力を回復してくれるだけでも有り難い話なのだ。




「”仙術”は特に【神技】の撃ち合いです。、その後の撃ち合いは本人持ち。手の内のこと、”仙術”に限らずですが、予選を嫌う理由です」


 俺がジェーンとの戦いで使った仙力は【神技】の一回半といったところか。

 つまりは、節約していかないとで枯渇することになる。




「初戦は色々と試しただけだ。距離を詰めての【雷波紋レイブォウェン】なら、1発でも充分な威力だろうから。次から、こんな出費は無いだろう」


「遠距離での撃ち合いが基本の”仙術”で。タイチ師父シーフーは簡単に出来そうだから、怖いですよ」


 別に恨みがある訳でも無い俺達は、のん気に笑い合っていた。






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 ーーー


 ーー


 ー






「ポンチャイ! 姫様のお気に入りだからと、たるんでいるのではないか!?」


「”無手”での体たらくは何だ!? このままでは”仙術”でも同じ結果になるのでは? 今からでも我らが代表を交代してやるぞ!」


 和気あいあいとした俺達、赤壁チービー帝国側と違って、”タルワール”陣営が騒がしい。

 テスラとジェーンの痴話げんかのような騒動でなく”極真武ジーヂェンウー”で、




 国代表者に突っかかる、同じ国の参加者達の騒動だった。






 ーーーーーー






「ジミー、メッガン、お前達が決めることでも、責めることでもない。われを処断できるのは姫様と……グリム王のみ。文句があるなら直接、進言するかわれよりも上位に勝ち進めば良いだけのこと。____、な」


「貴様! 我らでは無理だと鼻で笑いおって!? 許さぬぞ! この____””が!!!」


 ポンチャイのような褐色でなく、思い描くエルフの白肌の二人に詰め寄られ、グリムから叱責されたばかりで気が立っていたのだろう。

 普段なら国代表として、良くあることとして上手く扱うのだろうが、荒々しい返答を返してしまったようだ。

 それに対して、売り言葉に買い言葉で___




「どうやら____死にたいらしいな!」




 ___褐色のエルフにとっての”禁句”を言われたらしい。




 ”影”が広がっていく。




「「ひっ!??」」




 ”影”だけでなく、鋭く冷たき殺意も広がっていく。




「どうした? われよりも強いのだろう? われよりも結果を出す自信が有るのだろう? それを証明してみせろ。2人掛かりでもわれは構わないぞ? さあ、さあさあ、さあ!!! 高貴な”純血種エルフ”の方々の実力を見せてみろ! この”混血種混じりモノ”にな!!!」






 ーーーーーー

 ーーーーー

 ーーーー

 ーーー


 ーー


 ー






「”そこまで”! ……でして~~」


 鋭い制止の叫びが聞こえたと思えば、同じ声色の間延びした”声”が聞こえて来た。

 ”声”に反応したようにポンチャイの”影”が、殺意が急速に縮んでいく。




「ポンチャイさん、頭は冷えまして~? 試合前に【消力シァォリー】を掛けたことは良くなきことなれど、喧嘩の仲裁なのでして~。ご容赦を~」


「……ヨシコか。消された仙力は、われの未熟として受け入れよう」


 手段は分からないが、ヨシコが”影”を【消力】で消したことでポンチャイの頭が冷えて、場が収まる。




「ヨシコ殿、助かりました。まったく、下賤なポンチャイには困ったものですな。暴力で解決しようなどと__」


「勘違いなさいませぬように~」


 ヨシコのおかげで九死に一生を得た奴らが、すり寄ってきたのを一刀両断。



優勝候補ポンチャイさんの仙力を削る機会に恵まれただけでして~。、自国代表に助力はしても、妨害は致さぬもの~」


 助けたのは他国代表を合法的に弱体化するためだと言い放つ。

 確かにポンチャイは試合の際に、【消力】で消された分が無い状態になることになる。






「それに~。メッガンさんでしたか~? 予選の組み合わせ表で、わたくしの相手ですね~。ポンチャイさんに消されようが、わたくしに消されようが同じことでして~~」


 自分の試合が一つ減るよりも、ポンチャイの弱体化の方が優先。

 オマエ如きに負けるはずが無いと、自分よりも格下だと断言される。






「ジミーはオマエか!? ウチの相手だナ!!!」


 人を呪わば穴二つ。

 まさに【呪い】の具現化した存在の悪神”四凶スーシィォン”の三苗トウコツが相手になるようだ。






 哀れな二人の結果は、仲良く負けて帰ったとだけ言っておこう。






 ーーーーーー






 ”仙術”の本選出場まで、あと二回の勝利だった。

 誰が相手になるのだろうと、組み合わせ表を眺めていた俺とフェイ・ランが重大な事に気付いていた。




「災難だな、フェイ・ラン。順当に行けば、最後の相手がトウコツになるぞ。神が相手とは、ツいてないな」


 他人の、フェイ・ランの対戦運の悪さを笑い飛ばした。


「タイチ師父シーフー……。頑張ってください、としか言えません」


 逆に、フェイ・ランから同情が返ってくる。




 __順当に行けば、次の相手は……




「”無手”では後れを取りやがりましたが! 覚悟するで、ごぜーます!!!」


 二つの部門で”洋露波ヤンルーブォ”の国代表のニーナだったのだ!






 ____それに勝った先の、最後の相手は……




「奇縁でして~。また、ご指導のほどを~。お願い致しますね~。タ、イ、チ、殿~」


 同じく、二つの部門で”大和ダーフォ”の国代表のヨシコだったのだ!!






 俺の所だけ、激戦区過ぎやしないか!!?






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