”仙術”予選~チカラこそパワー~
「ア゛ァ~~ハッハッハ!! ざまあないわね! やはりテスラなんかよりも、このアタクシが”仙術”に
「痛っつぅ……。大声を出すな、リトルゲート
汚い高笑いが気になって見ればテスラが、これぞ! お嬢様な格好をした猿の獣人の少女に詰め寄られていた。
戦うために前髪をカチューシャで上げているだけで、それ以外は戦いに適していないような真紅のヒラヒラなドレスを身に纏っている。
「よくある話だ。国ごとに前回の最高順位者が出るし、出すのが基本だ。だから、国内での予選は基本しない。代表を目指す奴は1参加者として来るし、不服にも思っているから国代表に食って掛かる奴も多い。特に国に属していないようなケイオスや
「手の内を見せないためにも、出来るだけ試合は少ない方が良いですしね。”
ヤーとフェイ・ランの親子が、よくある光景だが
「見覚えがあります! あの方は”
皇女のシーが見知っているとは、それほど有力なのか、あの令嬢が
「
___あっ!! 思い出しました!!!」
「「”
たぶん、
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「ううぅぅ……。ひどい目にあったのであるぅ……」
「テスラ、難儀だったな。大丈夫か?」
予選の組み合わせクジを引きに行ったため、ジェーンから解放されたテスラに優し気に声を掛けた。
同じ温泉で汗を流した仲なので気遣っただけでは無く、対戦相手の情報は多い方が良いからである。
「親同士が仲が良かったので、リトルゲート嬢とは昔馴染みなのだ。年の離れた妹のように、
昔を懐かしむように遠い目をしながら、悲しそうにテスラが語る。
「妹のように感じていたのなら、なんで
「酒で記憶が曖昧なのだが、昨晩に話しただろう。ニーナ殿と同様に
「”6番”よ! ア゛ァ~~ハッハッハ!! 最強のアタクシと戦う哀れな”5番”の人は誰かしら!!?」
クジを引いてきて、高々と”六”が書かれたクジを掲げて騒がしくジェーンが帰って来た。
「……自信満々だが。ジェーンは強いのか?」
「強い。【
テスラからジェーンのことを出来るだけ多く聞き出すことが出来たのは幸いだった。
…………俺のクジには”五”と、大きく書かれていたのだから。
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
ーーーーーー
「ア゛ァ~~ハッハッハ! ”無手”では
試合のリングに上がった両者。
終始、騒がしく騒々しいジェーンとは対照的にタイチは静かだった。
”仙術”において、遠距離攻撃の手段が少ない
「ホン様、タイチ様が優勝なさると断言しましたが、”適性”が不利なのでは?」
「確かにそうね。でも、大丈夫よ」
__『それでは____”
「”仙術”に”適性”は大事。でもね、それと同じくらい大事なモノが在る。ソレがタイチは規格外なの」
”仙術”、遠距離攻撃の【仙術】において、最も必要とされる
その
ーーーーーー
「__黄昏よりも昏きもの! __血の流れより紅きもの!」
『リトルゲート嬢は、
”詠唱”は【武道】でいうところの、要は”タメ”である。
円滑に動くタメ、威力を高めるタメに必要であるが、無詠唱でも____特に問題は無い。
『威力は
「本当に、敵を目の前にしても”詠唱”するんだな……」
敵を眼前に、自分を守る味方も居ない状況でも”詠唱”を止めない強いこだわり、強い美学。
これが威力は長年の”仙術”優勝者、皇女のシーを超えていると評価されてもジェーンが国代表に選ばれなかった、国の予選を勝ち上がれなかった理由である。
「__時の流れに埋もれし! __偉大な汝の名において!」
「”タメ”てくれるのは好都合だ。色々と
そんな悠長な
タイチが右手でピストルを、人差し指と中指で銃身を表現した構えを取る!!
そんなスキを、タイチが見逃すはずが____ない!!!
「__我ここに闇に誓___
「【
___わ____ギャアアアアアアア!!!」
使えるはずがない、撃てるはずがない朱雀の【仙術】!
丸太のような”
哀れ! ジェーンは着弾の爆風に包み込まれてしまったのだ!!!
ーーーーーー
「ええええええ!?? アレって、朱雀様の【仙術】じゃん!? タイチ様、”適性”あったっけ?」
「ホンさん!?? 私達、精霊の補助は禁止ですよ!?」
白虎の精霊のガン、青龍の精霊のリウが真っ先に朱雀の精霊のホンの不正を疑った。
__タイチには、この世界には無いモノが有った。
「忘れているようだけど、タイチは”雷”に関してなら____
同僚達の非難の視線を受け流し、むしろ同僚達の記憶力を馬鹿にするホンの姿が在った。
____
ーーユニーク・スキル【
「ただ___
「ゲッホゲホ!!! ア゛ァ~~ハッハッハ! 見掛け倒しも良い所ね! 土埃を起こすだけの【仙術】かしら!? ____ちょっと……ビックリしたけど……」
___
__・試合場内、選手、リング全てが【
以前に特級
ーーーーーー
「まあ、これは昨晩、タイチとの作戦会議で想定していたわ」
「まったく、やり直しよ! __黄昏よりも昏きもの! __血の流れより紅きもの!」
『【
不発に終わった【雷槍】に気落ちせず、ホンが以前に語っていた言葉を思い返しながら、自信満々の表情を崩さないタイチ。
「”水”を、コップの水を流しても大したことは無いわね? なら、川の水なら? ”海”の”水”なら?」
「__時の流れに埋もれし! __偉大な汝の名において!」
「同じ
「__我ここに闇に誓___
「【
___わ____ギャアアアアアアア!!!」
本来なら神経を研ぎ澄まさなくては感じられないような
それに”
哀れ! ジェーンは骨まで見えるかと言わんばかりの”雷”の波動を受けて倒れ込む!!!
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
通常、人を一人倒すのには【
技術を用いれば【
過剰に【
いかに可憐な少女のジェーンといえど、武芸者である彼女を倒しきることは出来なかった。
「1度ならず____2度までも”詠唱”の邪魔を!!!」
口から煙を吐きながら、”球体”を四分の一ほど使ってジェーンが立ち上がる!
「【雷波紋】」
「ひっ!」
いくら”球体”で怪我や体力が戻ったとしても、痛みを感じた記憶は残る。
自身を痛めつけた【仙術】の再びの行使に、酷く怯えてしまった。
「【雷波紋】」
「ひっ!? …………ん?」
「【雷波紋】」
「あ、あら?」
発動しているはずの【仙術】が、いつまで経っても飛んでこないばかりか、何度も、何度も、何度も発動していることの違和感にジェーンが気付く。
『確かに、スキルのおかげで【雷槍】は使えるでしょうね。でも、スキルの
『なら【波紋】に”属性”を載せるのは? 多く仙力を込めれば威力が出るだろう』
『いくら多く込めても、1つの【仙術】に込められる量に
ここまでは昨晩の作戦会議で想定していたこと。
「【雷波紋】、【雷波紋】、【雷波紋】」
「__っ!?? __黄昏よりも昏きもの! __血の流れより紅きもの!」
タイチが何を狙っているのか、ようやく気付いたジェーンの悲鳴のような”詠唱”が始まる。
しかし、
「【雷波紋】、【雷波紋】、【雷波紋】」
「__時の流れに埋もれし! __偉大な汝の名において!」
受けた衝撃を
流れに作用する青龍の【仙術】で、【雷波紋】を垂れ流さず、
「【雷波紋】、【雷波紋】、【雷波紋】」
「__我ここに闇に誓わん! __我等が前に立ち塞がりし! __すべての愚かなるものに!」
もう、ジェーンを倒すのに充分な威力の確保は終わっている。
今、タイチは試しに何処まで、何発分の【雷波紋】まで、流さずに押し止められるか試しているのだ。
「間違っても、同じことを試そうと思わないことね。全方位への無差別な”属性”の垂れ流し。完全な仙力の無駄だし、タイチのような【スキル】でもない限り、”火”で”風”で自分も傷つくだけなのだから」
ホンが、そう締めくくった時にタイチの押し止める【仙術】に限界が訪れた。
「__我と汝が力もて! ___
”水”が集まり”川”となり、”川”が集まり”海”となる!
___等しく滅びを与えんことを!」
”波紋”が集まり”さざ波”となり、”さざ波”が集まり”津波”となる!!
「【
ジェーンの気配が、”機”が、”起”が、”気”が攻めになったことを【合気道】で察知したタイチの渾身の【仙術】!!!
リングも敵も味方も
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
ーーユニーク・スキル【
何もかもが押し流された試合場に唯一、タイチの周囲だけが無事であった。
__『し、勝者!? コレエダ・タイチ!!!!!』
ド派手な【神技】の撃ち合いが行われる”仙術”の試合において、ここまでの単純で純粋な、
初歩のような【仙術】で、【神技】と見紛うばかりの威力の光景が広がっている。
まさに____
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