”極真武”・”仙術”開幕

 ~~”極真武ジーヂェンウー”【縛りルール】~~



 ・【神技シェンジー】の使用は一度きり。


 ・頭上の球体による体力や仙力シィェンリーの回復は任意で行えるが、回復量は一試合に体力が本人の分、仙力が【神技】一回分なので注意が必要。


 ・公正を期すために大会期間中の仙力回復は球体からの回復と以外は出来ない。これはを遥かに超えた【仙術シィェンシュ】を使うことを抑制するためである。


 ・勝敗は気絶を含む戦闘不能、降参が認められているが、八百長などの防止を目的とした【縛り】の効果で、選手は常に””戦うことを強いられるため、負けを認めない限り降参は出来ない。




 ~~”仙術”限定【縛り】~~



 ・・試合場内、選手、リング全てが【】によるしか受け付けない。






 ーーーーーー






 ”仙術”が開幕される前にが二つ、発覚していた。




 一つは参加選手、しかも本選出場が決まっているの選手が二人、だったこと。



「酒くせぇ~で、やがります! それに怪我までしてるで、ごぜーます!! バカ! バカバカ!! テスラのバカ!!!」


「ニーナ殿、済まぬぅ……二日酔いで頭が、痛いのだ……。大声は止めてくれぇ……。【解毒アンチドーテ】を頼むぅ」


「罰で、ごぜーます! 本選まで治さねぇで、ごぜーますですよ!!!」


「そんなぁぁ……痛っつつ……」


 濡れた犬みたいに大人しくなったテスラがニーナに怒られていた。

 ダメな兄貴を叱っている幼い妹みたいで、外野から見る分には微笑ましい光景だった。




 そんな”洋露波ヤンルーブォ”側とは一転、”タルワール”側は近寄りがたい雰囲気だ。




「ポンチャイ。お前さんが娘に、ナターリアにだけ忠誠を誓っているのは構わん。だが、は軽率だろがい!?」


「……………………」


 他国であるために”タルワール”の国王、グリム・ドヴェルグの正式な装備ではないらしいハンマーを片手に、”耳かき”でも扱うように持ちながらポンチャイが詰問されていた。

 子供みたいな背丈で、餅つきに使うような鍛冶用の巨大ハンマーを振り回すさまは、さすがはドワーフの王といったところか。


「今回はテスラ殿とタイチ殿の計らいで、大事おおごとにしないそうだ。その温情に背いて、また同じようなことをしてみろ?」




 天高く、ハンマーが振り上げられる……。




「ふぎゃああああ!??」「なんで、ごぜーますか!?」「ほーー!」


 選手、会場はおろか、帝都全体が揺れたのではと錯覚するほどの地響きと轟音。

 振り下ろされたハンマーが耐えきれずに衝撃が走ったのだ。



「飼い犬のしつけは飼い主の責任だろがい。珍しもの好きのナターリアの”コレクション”。それにタイチ殿を加えようと同じ過ちを繰り返すなら、その全てをワシの手で____こうするぞい!!!」


 粉々に吹き飛んだはずのハンマーが周囲に被害を出さない為だろうか、グリムの掌の上で球体天体を形成するように集まっていた。

 元の体積よりも小さく、野球のボールのように圧縮されたソレを無造作に、開けた大穴へと投げ捨てられていく。



「委細承知いたしました。姫様の為にも、勝手は致しません」


 深々と、子供の背丈のグリムよりも頭を下げるように腰を曲げ、謝罪をしたポンチャイを一瞥もせずに立ち去っていく。




「タイチ殿。謝罪の品、詫びを考えておく。それで、”タルワール”への遺恨は水に流してもらえると助かる。楽しみにしてると良いだろがい!」


 そう言い残し、豪快に笑って、グリムの背中を見送ることしか出来なかった。






 発覚した問題の二つ目は___




「お~~怖や。いくら一線を退いたとはいえ、流石は”グリム破壊王”はん。シロちゃんが怒られてないのに縮み上がって、うなってしまいそうやわ」


 そう言いながら気安く、俺の肩にしな垂れかかる女が居た。



「本選の出場選手。は向こうだろう? コッチは予選参加者だけだぞ」


「こないな美女に寄りかかられとるのに、つれないわぁ。いけずな御人や、タイチはんは!」


 そう言って、より一層、身体を押し付けてくるのだった。




 ___”大和ダーフォ”の国代表枠として、特級妖魔ヤオモ九尾ジゥウェイ”のシロが参加することになったことだ。






 ーーーーーー






ちんとしては認められぬ。”極真武”において、妖魔ヤオモの参加を認めるなど』


『そないなこと言いましても。すでに悪神”四凶スーシィォン”の三苗トウコツはんは参加しとりますえ? なさるつもりで?』




「”幻惑”の女狐め! 今度こそ、ウチと戦ってもらうゾ!!」


「あ~~、はいはい。勝ち上がって来て、くじ運が良かったらで良ければ、お相手しまひょな」


 問題の元凶と原因が二人して、じゃれ合っている。

 能天気なコイツらのせいで皇帝と”女王”が口論していたと考えると、可哀想に思えてくる。






「”無手”と違って、”仙術”は参加者が多いが。思っていたよりも少ないな」


「良い所に気付きましたね! 流石です、タイチ様!!!」


 シロと同じく、コッチに遊びに来ていた国代表枠、皇帝の娘のシーが元気よく俺の疑問に答えてくれた。



 ……遠くで、テスラが頭を押さえていた……。




「”仙術”、要は【仙術シィェンシュ】の撃ち合いです! 1発しか撃てませんが、その最高峰の【神技シェンジー】で競うことになるのは必然ですね!!!」


「見た目は派手で人気も有るが。才能に恵まれた【神技】使いだけしか出られないから、参加が少ないのか。使えないくせにフェイ・ラン、お前はどうしてたんだ?」


「撃てるのは1発だけですからね。避けるなり、防ぐなり、戦い方は有ります。撃たれる前に、も有効ですよ」


 事前にホンと検証したことを、長年の参加者である二人から確認を取る。






 ”仙術”、確証は無いが、運が良ければ優勝できそうだ!






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 ーー


 ー






 タイチの現在の”仙術”での賭け率オッズは六倍と、チィェンが賭けた時よりも半分まで下がっていた。

 ”無手”での予想以上の活躍により、フェイ・ランのように【神技】に対処し、勝負になると判断されたのだ。




 しかし所詮は、”仙術”で不利な白虎パイフー青龍チンロンの”適性”のタイチ。

 ”全適性”とはいえ、【神技】の使えぬフェイ・ランの賭け率オッズの四倍に届かぬ世間の期待値だった。






「喜びなさいな、チィェン。私が夜更けまで手伝ったことも有るでしょうけど」


「は、はい。ホン様、何でしょうか?」


 __しかし、此処にタイチの勝利を、優勝を”願う”者が居る!




「”仙術”、今年の”仙術”で優勝するのは____タイチよ!」


 ____勝利を、優勝するのを者が居る!!






「ついては、ソレを手伝った私に、≪クッキー謝礼≫を渡すこと許可するわ」


 ______”おこぼれ”を要求する者が居る!!!






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