貸し借りと恨み
「ヨシノはんの動きを止めたんだけでも驚きやけど、何かと
該当する武芸者は少なく、黒髪長身、顔付きなどの風貌の情報からタイチであることが特定される。
「ほおお!? 驚嘆でして~~。わたくしに~、
本気の【
抜け出る多量の
別の方面から、ヨシコは乱入者がタイチであることを特定していた。
「おっと。確かに女性の腕を掴み続けるのは、問題あるな。すまんすまん」
ヨシコの『驚嘆』を”セクハラ”的な意味合いだと勘違いしたタイチが腕を放したことで、一種の弛緩した空気が流れ始める。
ーーーーーー
「ひいいぃいいぃい!!!」
狼藉を働いていた男が、情けない悲鳴を上げながら野次馬達の中へと逃げ去っていく。
男を処断しようとしていた女性達の意識が完全に俺に向けられているので、無事に逃げうせることが出来るだろう。
「うちの国の恥が逃げてまうわ。どない落とし前を付けてくれはりますか?」
口では逃がしたことを非難しているようだが、男から完全に興味も関心も消えうせているのが分かる。
「
「そうですわ! タイチ様の言う通りです! 他国の
被害者である少女も男の命まで奪うことは無いと主張もしているし、他国の彼女達に自衛権や逮捕権は存在していても
「コバヤカワ・サヨ……。”姫様”と呼ばれ、その
「侮辱しはりますか? どないしましょ? なあ、ヨシノはん?」
弛緩していた空気が、再び張り詰める!
ーーーーーー
__『なんやなんや! 知っとったん? タイチはん、お人が悪いわ~~』
頭上から幻のように現れる
「タイチはんら、異世界の人らは”極東”と聞いたら”和服”。”西欧”なら”洋服”やと。何故か勘違いするん、おもろかったんのになぁ。
陽気に芝居がかったようにリアクションする特級
「はあぁ……。シロはんのせいで興が、そがれてしもたわ。今日は、この辺で
「シロちゃん、了解~~。____タイチはん、
俺達の移動の邪魔をしたことへの詫びのつもりなのか、一触即発の空気を壊したことで返したようだ。
「おい! ウチのタイチに、いつまで【消力】している。【呪い】を喰らわせるゾ!」
「これはこれは!? 失礼いたしまして~~」
遅れてやってきたトウコツの注意で、俺を襲っていた慢性的な気だるい【消力】が解かれる。
「今日は、噂のトウコツはんも見れましたし____極東の”
「それは、
最後の最後まで、敵対心を保ったままで”ダーフォ”の連中は帰って行った。
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
__『タイチ様には”
日が暮れ始め、ロゼ達と別れて、皇帝が用意してくれた宿を目指していた。
__『タイチが気に入るだろう最高の宿を用意しておいたから、安心すると良いぞ』
≪老舗旅館・桃源郷≫
俺の目の前に、前世の給料では絶対に入れないだろう豪華な
気に入るも何も、俺に分不相応だと恐縮するしかない宿が在った。
「はは……。思えば遠くに来たもんだ____なんてセリフが有ったな」
異世界で前の世界の文化を見て触れて、郷愁を感じながら入り口に入っていく。
「タ~~イチぃ! 遅いぽよ!」
「タイチ
驚いたことに宿には
二人の背後を見ると、領主夫妻、街のマフィア”
ーーーーーー
「はっはっはは! 驚かれたようですな、タイチ殿。私の街から貴重な”特級”を2人も参加させることになったので、皇帝から親子で招待されたのですよ」
言われてみれば確かに、”特級”という希少な戦力を街から動かすのに際し、領主である
それを直接、
「ほっほっほ! ワシらは領主の小僧っ子の護衛のようなモノじゃな。元々、この時期は”
マフィアである”
配下の四天王”
皇帝から、ある”
正確には___
「? なんネ、タイチ。ワタシを、じっと見て。懐かしむ程、会ってない訳じゃないアルヨ」
___皇帝からの”縛り”に最適な人材の”
「チュイ。早速だが、
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「フーー。良い湯だった。地方に行った時に色んな温泉に入ってきたが。ここのは格別だな。火山が近くに無いようだから地熱か。どこまで深く掘った。掘れるのだろうか」
チュイの協力を取り付け、仙力回復に効果が有るという自慢の温泉に浸かり、汗を流す。
ここ”桃源郷”は俺に合わせるように和風で、浴衣のような室内着が用意されており、それに着替えて風呂上がりのビン牛乳を手にしていた。
「あっ! タイチ様、お帰り~~。
「____なん……だと……」
俺が楽しみに、風呂上がりにビン牛乳を片手に食べようと思っていた___
≪
___最後の一枚を食べていたガンちゃんが談話室に居た。
ーーーーーー
各部屋に行くための中間地点のような場所に談話室は存在し、俺達以外は皇帝の計らいで泊り客は居なかった。
食事や自慢の温泉だけの客は入ってくるが、宿泊の施設とは離れているので関係者以外は立ち入らないはずだと油断し、重要な私物以外を荷物置き代わりに使っていた。
実際、暇つぶし用に持ち寄られた雑誌やマンガを俺達が共有できるように置かれているし、菓子などが
「そんなに怒んないでよ、タイチ様。だって、僕が見た時は
泣きながら、
嘘は言っていないようだし、ツァィだけにプレゼントをするのは悪かったので皆に買ってきた土産を配る際に置いたままにしていた俺も悪いのだが……。
「置いた時に、リウが『名前にセンスの欠片も無い。何処でも買えるような土産です! 無駄遣いです!!』と騒いだ。だから皆はコレが俺の物だと認識していた。俺が開けない限り、勝手に食べるのは____
「おほ~~。タイチ様の探偵ムーブ。初めて見たよ。めっちゃ怒ってるよ」
後から調べたところ、≪ムーダンに行ってきました・クッキー≫は帝都の高名な菓子職人が数年前に新たな帝都土産として開発し、その命名を一人の”
__”一目で帝都の土産だと分かる”ように命名して欲しい、と。
根っからの学者肌で、こういったものに興味が無く、命名後に”老衰”で亡くなった程に
この名前のせいで売れ行きは悪いが、味は素晴らしく良く、インターネットが無いため爆発的に広まらないが、
「俺の風呂上がりの楽しみを妨害した犯人! 食べ物の恨みが怖いことを教えてやるぞ!! 探偵の名にかけて!! 真実は1つだ!!!」
「食べ物の怒りで、
思わぬ
大会が、【
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