白い狐
皇帝・ダオからの≪強制・指名依頼≫を請けてからの翌朝。
「移動の【
六日後に控えた目的の武術大会”
以前に誘拐されたこともある皇女のシーを連れた旅路が平穏である”幸運”を願うよりかは、【瞬歩】で移動した方が安全で確実だと判断したのだ。
「今回も馬車を使わないですか!?? やった! 偉く賢いボクの繊細な、お尻が守られましたよ」
馬車の固い荷台を苦手としているミドリガメの亜人のような少女の姿の精霊・シンが喜んでいた。
「目の前に移動できるのは、見える距離で単身の場合だけです。見えない移動先に何か有れば、ズレますし。”
「移動までは
何気なく使ってきていた【
以前に言われたことのある【神技】を連発しないようにというのは、こういった意味合いも有ったのだろう。
「聞いたことが有ります! 今は平和で大きい戦争も有りませんが、昔の戦争では”伏兵”の方が本隊よりも多い状況が有ったそうです! 歴史の授業で習いました!!」
「当時は”攻撃”の
俺が【瞬歩】を使ってでも”極真武”に間に合わせなくてはいけない遅刻組の前回の”
俺が大会で【武道】を出し惜しみなく披露することになったと聞いた途端に、上機嫌で早く行こうと急かす遅刻組。
「シー様もフェイ・ラン様も前回の部門ごとの優勝者なのですから、国の代表枠なのですよ。もっと自覚を持って頂かないと困ります」
そして何故か付いて来た自称、俺の
「うっきゃあ! タイチちゃんの晴れ舞台だお! 見逃せないお!」
「うふ。うふふ。タイチさぁんが世界に認められる日が来ましたねぇ」
「仕事で応援に来れない兄上の
ツァンと
ーーーーーー
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ーーー
ーー
ー
帝都の高い建造物らしき物が、かろうじて見えるくらいに離れた山の中に【瞬歩】で移動できたらしかった。
「うふ。タ、タイチさぁん。うふふふふ。タ、タ、タ、タイチさぁぁん」
「近いと言えば近いと言えるが。ちょっと離れすぎてないか? ”満月草”や”
「おふう……。タイチ様、冷静だね。確かに人数は過去最多だけど、これくらいなら問題は無いよ。ここまでズレたのは
__『お~~い』
「タタ、タ、タイチ様。呼んでます、呼んでますよ!!」
「すまん、チィェン。後にしてくれ。____つまり、他人の【仙術】に介入、邪魔が出来るということなのか?」
「むしろ、出来ないと思う方が理解できないわね。実際にタイチは”
__『お~~いってば。聞こえてはりますか~~』
「タイチさんは感覚的に分かるでしょうが。
「タイチちゃん! ちょっと邪魔されて、少~~し歩くことになっちゃったけど。無視は可哀そうだお! イジメかっこ悪い!!」
殺気や敵意、
それを心優しいツァンから許すように諭されて、ようやく視線を張本人へと向けることにした。
__『そうだぞ~~。イジメ良くありまへんよ~~』
「……わざわざ帝都から離れた場所に連れて来たんだ。目的は何だ? 理由によっては
目の前には、視界に収まるかという程の巨大な妖狐の姿が在った。
「お~~怖や。いくら男前でも、そないに睨まれたら。縮み上がって、
山かと見紛うばかりの白い____
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ーーーー
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ーー
ー
「名前は”
「タイチさん。このパイさん、いえ、シロさんですね。青龍様、”
無邪気で、気さくな、我儘な九尾をリウが紹介しているところを___
「リウちゃん、
___遮るようにシロが、厄介なっている国の名前を遮る。
「……はぁ。特にタイチの世界から来た”
心底、くだらないと嫌な顔をしているホンの傍で三者三様の反応を見せている精霊達。
「タイチさんが驚く姿ですか……。ボクも見てみたいですね。タイチさんには驚かされてばかりですし、たまには
「タイチさんだけが驚く姿……。久しぶりですね」
遊郭での”自動ドア”の件などで俺だけが驚いていたことを見たことの有るリウが懐かしみ。
「タイチ様が、
”ネタバレ”はしないが、ガンちゃんは退屈そうにしていた。
「街中で真の姿になれへんからね~~。こうして、ひなたぼっこしとったら【神技】の気配を感じたんよ。噂のタイチはんかな? 思うてな。厄介になってる国のために、顔を拝見しよ思て」
そんな理由で気軽に遠くに移動させられたのでは堪ったものでは無い。
この距離だと、帝都に到着するのが昼過ぎになってしまうではないか。
「予想外の場所に出ても冷静。シロちゃんを見ても冷静。半信半疑やったけど、ホンマにトウコツを従えとるし。”
俺の非難の視線を受け流すように飄々と、悪びれもせずに陽気に言葉をつむぐ。
悪意も、敵意も、害意も持たない無邪気さは何処か憎めない
「シロちゃんは、も少し休憩してから行きますよって。うちの
とんだ邪魔が入ったが、なんとか無事に帝都に昼過ぎには到着することが出来そうだった。
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