笑顔
薬草採取の依頼料を受け取り、足早に俺達が厄介になっている
「急ぎましょう、タイチさん。思わぬ≪指名依頼≫のせいで遅れてしまいました。今ごろ大忙しですよ!」
特級
それを俺達の店先での
「急いで手伝わないと、せっかく取ってきた”
今まで独りで切り盛りしていたが予想外の繁盛に追いつかず、営業日は俺達が手伝うことになっているのだ。
「今は、まだ良いですけど。タイチさんが”願い”や依頼で、遠出するかもしれませんから。誰か良い
商品に対しての偏見は消えたが、ツァンのハーフの差別は根強い。
買うのは良いが、一緒に働いてくれるほどの人格者が居ないのだった。
「今、愚痴っても仕方ない。とにかく急ごうか」
ーーーーーー
「美味しいですよ~~! 美味しい肉まんですよ~~! 美味しいから大丈夫ですよ~~!」
「母さん!? 何が大丈夫なんですか!!? 美味しいしか言ってないですよ!」
店に到着すると、先日の大銅貨一枚の依頼の兎の獣人の青年と、すっかり病が癒えた母親がツァンの店を手伝っていた。
「タイチさん。接客は私とガンガンで、やりますから。調理と呼び込みを3人で、お願いします」
「タイチ様、こんにちは。今日は母が、お礼を言いたいと言っていたので。僕の仕事と母の内職の休みの日に伺ったのですが。繁盛してますね。差し出がましいですが、お手伝いさせてもらってます」
「美味しいから大丈夫。繁盛して当たり前ですね~~」
病で生死をさ迷っていたとは思えない程に、ふくよかで元気そうな青年の母親を見て、無事に助かって良かったと思えた。
「美味しいから、大丈夫だよ~~」
「お母さん、美味しそ~、買って~」「……美味そうだ」「ほ~~、どれどれ」
幸せそうに肉まんを1つ、
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ーーーー
ーーー
ーー
ー
「すいません。タイチ様に、お礼を言いに来ただけなのに夕飯まで、頂いてしまって」
「良いんだお。ご飯は皆で食べたほうが美味しぃいんだから」
店を手伝ったのだからと、ツァンから夕飯を食べていけと言われた青年が恐縮してしまっているが、明るいツァンに諭されて食卓を囲んでいた。
「ひゃっほ~~。唐揚げ、唐揚げ。美味しいな」
「すっかり繁盛店になったのですから、人を増やしたほうが良いんじゃないですか? ツァンさん」
俺達の帰りが遅かったのもあるが、確かに店が独りでは回らなくなっているのは事実だった。
これ以上の
「うゆ~~。雇おうと思うんだけど~。良い人が来てくれるかな~~」
「手伝いたいのは、やまやまなんですが。ウチは息子も私も仕事が有りますので、毎回とは。ですが、美味しいから大丈夫ですよ」
ツァンの傭兵としての仕事、素材の調達、仕込み、調理と、週に二日、夕暮れ時にしか開店しないことも考えても後一人くらいは必要だと思う。
だが、やはりツァン自身も”鬼”のハーフであるのがネックになっていることに自覚が有るのだろうから消極的だ。
「そうだ、ツァン。明日は、店は休みだよな。依頼を受けて1日空けるかもしれないから。一応、先に言っとく」
「うゆ? 珍しいね。タイチちゃんが、1日以上かかるかもしれない仕事を受けるなんて。どんな依頼だお?」
厄介になっているツァンの店を手伝っているので、長く不在にする時は事前に報告することにしている。
「行ってみないことには詳しい内容までは分からないんだが。色街に行って、そこの1番の
ツァンの持っていた
「は? どういうことですか? 本当に依頼ですか? タイチさんは男の方ですし。そういう欲求が有ることに文句は有りませんが。嘘は良くないですね。もう1度、もう1度だけ聞きますね。
女性にしては長身で、オレンジ色の長い髪を少し後方で団子状に、二つに纏めたツァンの片方の団子に隠された”鬼”の象徴である角が、隠しきれないほどに成長したと錯覚するくらいの強烈な【圧】!
周りを見渡すと、俺からの視線を合わせまいと皆が俯き、顔を逸らす!!
一日に二回も、笑顔の本来の意味を味わうとは!!!??
ーーーーーー
「タイチちゃんは、まだ街に不慣れだろうから。ツァンちゃんが付いて行くお」
事情を説明して、ようやく納得してくれたツァンが同行を申し出てくる。
「いや、大体の場所は分かる。1番の妓女なら、少し聞いて回れば……」
「付いて行くお」
「いや、でも……」
「
ヤバい!? また、
明日の依頼への同行が決定する……。
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