この世界に無いモノ
「何も言わないんですか?
「何のことだか分からないな。リウ」
何を言いたいのか、
「私が、もっと上手く媒介を使っていれば、こんな無駄手間なんか……」
「叱る気も、怒る気も無い。変な話だが、そういう神や精霊の配慮が足りない部分が有るおかげで、俺は生かされている。俺が、何か言える立場ではないからな」
本人が、すでに反省しているのを叱るのは、
そのおかげで生かされているので、上手く出来るように教育、指導するのもオカシイのだ。
「こういうのが俺の、今の
「ーーっ!! 見ててくださいね! 迷い人さん! 私は優秀なので、すぐに迷い人さんが居なくても! 自分だけで何とか出来るようにしてみせますからね!!!」
しおらしいより、自信過剰で、傲慢不遜のほうが、リウらしいと笑ってしまう。
「
ーーーーーー
「あれは”
「あれは、分かりやすく言うと”ゴブリン”。見た目も似てるでしょ? 色は違うかもだけど、要は雑魚。でも、数が多いね。タイチ様」
まだ長々と自慢の知識を披露し続けるリウより、俺に分かりやすく簡潔で必要な情報だけをくれるガンちゃんは助かる。
俺の思い描くゴブリンと同じ、子供のような大きさの
「どうするんですか? お金と時間も無かったですから、装備が有りません。あの数を、どうしましょう」
「ん? 可笑しなことを言うな。それは、もちろん。殴る!!!」
生前、探偵をやっていて、荒事になったことも多数。
やる前からも、そういう事が多いのが分かっていたから護身術として、一通りの武道は習っていた。
剣道や弓道なんかの武器を使うのは、用具に金が掛かるのもそうだが、現代社会では活用しづらいので習っていなかった。
だから俺に出来ることは、最初から肉弾戦だけなのだ。
「イギギ、ギギェアアアアア!!!」
駆けだした俺に気づいた一体が叫ぶ!
足場の悪い森の中、相手は小柄とはいえ多数、主に使う武術に選んだのは……【空手】!!
「----しっ!!!」
駆けだした勢いそのままの俺の正拳を受けて、疫鬼の
……
…………爆散した!!?????????
ーーーーーー
「……綺麗……」
タイチのことを疎ましく思い、否定的なことを言い続けてきたリウが発する素直な感想。
「身体強化の【
強さとは単純に、体格と筋力で決まる。
その
この世界では
タイチ自身の技量自体は達人と呼べる程ではなく、良くてプロになれるかどうかの人並以上のレベルであるが、この世界では画期的で、斬新に映っていた。
「ギゥガア!!」「ギャバ!!」「ギャギャ!!!」
熊が、ゴリラが、人型の大型野生動物が、プロ並みの武術を行使する脅威、恐怖を証明するように疫鬼が四散する。
身体強化の【仙術】で強化されたタイチの【空手】によって、当たった個所が爆散し、
十分と掛からず、殲滅された疫鬼の群れの中央に、
ーーーーーー
「……気持ち悪い。吐きそ、うだ」
妖魔とはいえ、人型の生き物を自分の手で
『
ウチの所長の鉄の掟を長年にわたって守ってきたおかげで、戦いの最中に吐き散らかして、殺されるなんて事態にならずにすんで良かった。
「タイチ様ーー!! お疲れのところ悪いんだけど。疫鬼の”
血まみれの死体を漁れと、精霊様の尊き教え……。
消滅はしたくないので、吐き気を抑えて、心を殺してやるしかないか……。
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