苦労する生き方
「止めなさい! 見苦しい!!」
俺の発言により殺気だった受付に響き渡る怒声。
「
フェイ・ランと呼ばれた糸目の、嫌味なくらいイケメンの青年に、殺気だった荒くれ者達が恐縮する。
長年、様々な人間を見てきた俺、いや、俺でなくても一目見ただけで分かるほどにフェイ・ランという青年からは、他者を寄せ付けぬ程の強者の風格を感じられた。
「教育されるのは、貴方達の方です。相手の力量を推し量れぬなら、黙っていなさい。
ツァンという強者が居なくなってから、陰口を叩いていた荒くれ共にセンスのある皮肉を言うところも、嫌味なくらいに決まっている。
「
「
現時点での、この世界における俺の実力が分かっていない。
フェイ・ランが
「そう言ってもらえると助かります」
顔を上げ、朗らかに笑い、周囲に睨みを効かせてから立ち去っていく。
「素晴らしい考えと覚悟ですね。お互い、苦労する
去り際に、ポツリと溢した独り言が、耳に残る。
ーーーーーー
「タイチ様が
騒ぎが一段落して、引き続き俺の傭兵登録を請け負っていた受付嬢が、すまなそうに登録を断ってきた。
これはツァンへの差別とは違う、ハッキリとした理由のある
「だから言ったでしょう!! 迷い人さん! どうするんですか!? 生活できなかったら、
生前から、食事には強い関心が有ったから”飢え死に”だけは勘弁してほしいところだが、自分の
「こうなっては仕方ありません。迷い人さんの無駄に有り余る
「ん? よく分からないが……”許可”する」
言うや否や、俺の身体から
「あの新人、”
見えるようになったのだろう精霊のリウの姿を見た周囲から驚きの声が上がる。
「精霊は通常、創造神に招かれた
周囲の反応を、ガンちゃんが俺に的確に解説する。
「【実体化】させるのは相当の仙力を使うから、それだけで勇者認定されるくらいなんだよ。気を付けてね、タイチ様。森の中での身体強化の【
車で例えると低速ギアで速度を出そうとしている、料理を作るのに鉄を溶かす程の炎を出す、隣の家に飛行機で行くような無駄なことをしているようだ。
「一生の在留を保証されていないタイチ様は。僕ら、精霊と同じような存在なんだ。仙力を使い切ったら、問答無用で
言われて、自分の手を見てみると、若干だが
「この迷い人さんは我が主、
「そういう事でしたら、登録するのに問題は有りません。タイチ様、どうしましょうか? ”精霊憑き”なのですから2級から……いいえ、特級になさいますか? 申し遅れましたが、タイチ様の
自分専属の傭兵の評価が上がれば、給料や
まったくの新人、しかも迷い人だと思っていた俺が、
「普通に5級からで良いです。この世界のことも、未だに良く分かりませんし、下積みは大事だと考えてますので」
「それは大変、素晴らしい考えです。タイチ様。この世界の生活や分からないことがございましたら、この
どの世界でも、給料や出世に必死になるのに共感を覚え始める。
「せっかく苦労して登録したんです。薬草摘みなんかの雑事を、こなしてみましょう。迷い人さんは、生前は探偵。モノ探しは得意でしょう? チィェンさん、それ関係の依頼書を見せてください」
「はい! かしこまりました!! 精霊リウ様!!!」
ーーーーーー
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
ー
「どうして!!? この依頼が、未だに未達成なんですかーーーーーー!!!??」
採取系の依頼書を見ていたリウから、驚きの声が上がった。
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