時間を節約

 家に帰ると、どっと疲れが身体にのしかかった。今日は大変だった、そういえば、なんで私はいきなり異動になってしまったのだろうか。

 その説明を部長からも桃山さんからも聞くのを忘れていた。今は11月だ。異動があるとしたら、10月からのはずだから、何からしらの原因はあるはずだけど、よりにもよって私なんだろう。本当に、やっていけるのだろうか。考えるだけで、頭痛がしてきた。今日はあの2人に流された気がする。

 人とコミュニケーションを取るのが苦手だったし、単純な流れ作業で決まった時間を集中して、没頭できることが好きだったから、会社に入ろうと思っただけなのに、異動で、人と関りが重要な事務作業をすることになるなんて考えてもいなかった。

疲れてきて、眠くなってきた。


アラームがなって、目が覚める。朝の6時半だった。昨日着ていた服のまま寝落ちしてまっていた。急いで、用意しないと遅刻してしまう。

そうえば、今日から何を着ようか。今までは、工場に入れば作業に着替えていた。これからは、着た服装のまま、仕事をこなさないといけない。着る服に迷ってしまう。こんなこと、今までなかった。わからない。やぱっり今まで通りのズボンに、Tシャツというズボラな服装になってしまった。メイクも適当で、髪の毛もぼさぼさのまま、家を出てしまう。


「おはよう、ゆずちゃん。昨日は眠れた。」

「あっ、はい。おはようございます」

「ひどい顔だね」

「そうですか?」

「うん、朝ごはんはちゃんと取った方がいいわよ。そういえば、ゆずちゃんって、今住んでいる家まで、ここから何分くらいかかってるの?」

なんで、朝からそんな質問してくるのだろう。どこに住んでようと私の自由ではないのか。ただ何も答えないわけにもいかない。

「電車と徒歩で1時間くらいです。」

「遠いわね。もう少し近くに住んだら」

「近くですか?」

「朝起きるの辛いなら、近くに住んだ方がいいし、時間の節約になるわよ。」

「時間の節約ですか?」

「そう、この近くの方が物価が高いと思ってるなら、その分、今、住んでいる家賃と交通費を合わせてくらいの値段になると思うわよ。こっちに住んだ方が、時間の浮いて、時間を節約できるだけどね。」

部長は違う人に呼ばれて、その人とどこかに行ってしまった。

「おはよう」

「おはようございます」

桃山さんが、やって来た。

「部長、何か言ってた?」

「あっ、近くに住んだ方が、時間の節約になるって言ってました。」

「仕事の話じゃなかったのね。まあ、人によるわね。交通費は会社が出しくれてるから、別にっていう人もいるけどね。お金を節約することよりも、時間を節約してる人の方が効率の良い仕事をこなす人が多いからね」

「そうなんですか」

「そう。今日、別件の仕事があるから手伝ってね」

「はい」

「昨日はしょうがないかったけど、もう少し綺麗めな服装で、会社に来てね。人に見られる仕事だからね。」

「はい」

そう答えるしかなかった。とりあえず、今日の帰りに買い物に行くしかない。

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