お金を使うこと

 「基本的に、ここは雑務がメインだから、他の部署の補足や、お手伝い的なことが多いって思ってくれたらいいから」

「はい…」

桃山さんは、どこか雑と感じるような説明の仕方をしてきたので、不安になってきた。

「徐々に分かっていけばいいわよ。最初から何でもかんでもできる人はいないから大丈夫よ。ゆずちゃん。」

部長もそうだが、やっぱり適当に感じる。本当にこれから大丈夫かな。当り前かもしれないが、総務課といっても、何かと振り分けがされているようで、ここでは、主に、社内環境整備に関する仕事で、他に人事や経理など色々とあることだけは分かった。今まで、工場でライン作業をしいたので、あまり、会社の詳しいところまで、知ることがなかったので、何もかもが初めてすぎて、頭が真っ白になっていく。


 「部長、広報部が、来週に小学校の社会見学が何件かあるから、今から誰か会議に参加してほしいって言ってるので、私が参加してもいいですか?」

「そうね、ゆずちゃんも一緒に行ってきな」

「はい、わかりました」

桃山さんが参加しようとした会議にさんかすることになった。会議室に入ると、4人くらいの人が、もうすでに座っていた。

「遅くなってすみません」

「じゃあ、はじましょうか」

 詳しいことはさっぱりで、小学生4年生くらいの子どもに、楽しく学べる環境にすることが目的だという内容ようなだった気がする。桃山さんからは、とりあえず、聞いているだけでいいと言われていたので、ただ、ぼーっと座っていた。

 1時間ほどで、会議が一旦終わった。もしかすると、手伝いに駆り出されるかもしれないと言う事だった。


 総務課に戻ると、各部署から備品の購入に関しての許可申請が、パソコン内に何件か入ってるらしい。その確認などを桃山さんとすることになった。会社に備えられたフォーマットを使って、許可申請のやり方を教えてもらった。これが多くなるのは、いつも下旬にかけてらしい。月に1万円内で備品を購入可能で、何を購入するのかを確認する作業。もし、備品の中で、必要かどうか判断できない場合、相手の部署に連絡をしないといけない。今日は、とくに何の問題もなかったようだ。

「今日はよかったけど、本当に皆、会社のお金だからって、何でも購入しようとするのよね」

「そうなんですか」

「そうよ。自分のお金なら買わないものも、会社のお金なら、ためらいもなく買おうとするのよね。」

自分のお金じゃないと思えば、そうかもしれない。

「ゆずちゃんは、もう少し自分にお金使ったほうがいいわよ」

急に部長が後から声を掛けられ驚いてしまった。

「そうですか?」

「そうよ。自分に投資することは、心を豊かにしてくれるわよ。お金が減るとか、節約とか、言ってる人は心まで貧乏なる気がするのよね」

顔もスタイルもいい人間が何を言ってるのだろう。何かにお金をかけるほど、心が侘しさが募っていく。部長は桃山さんに、書類の確認のハンコを押したものを渡して、席に戻って行った。


「三上さんは、自動販売機で100円の缶コーヒーを買って、歩きながら飲むのと、店に入って、500円のコーヒーを飲むのであれば、どっちを選ぶ」

「100円のコーヒーです。」

「なんで?」

「安いから」

「やっぱり、そうなるよね」

「どういうことですか?」

「お金を減らすという考えが、ダメだと部長は言ってるんだけどね」

「はあ…」

「500円のコーヒーを買って、お店に入れば、快適な空間が待ってるし、コーヒーも美味しく感じるでしょう。喉の渇きも、心の快適も与えてくれる。でも、安いから100円の缶コーヒーを買って、歩きながら飲んだりしたら味が良くわからなかったり、缶をどこに捨てようか迷ったらりするとストレスが溜まりやすくなる。決して、100円の缶コーヒーがダメとは思わないのよ。ただ、お金を減らしたくないと思って、安い缶コーヒーで済ませることが良くないって言ってるだけよ」

「そんなんですか。私はストレスが溜まったと思ったこがないから、分からないですけど。」

「まあ、それもそうね」

 桃山さんに、どこか呆れられた気もしたが、これ以上、何を言われても、私には伝わらないことを分かってほしい。

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