15
第三王子アレックスの飲み物に毒物が混入していたーー
その噂が城中に広まるころには、シャーロットは地下牢にいた。
アレックスの飲んだお茶と同じものがシャーロットの部屋にあったからである。
あの日、差出人不明で届いた茶に毒が混入していたのだ。
けれどもシャーロットは茶葉の入った袋を開封せずに棚においていた。シャーロットが犯人のはずはないのに、捕らえに来た衛兵には話が通じなかった。
シャーロットは抵抗することも弁明することもできず、アレックス殺害未遂の容疑で牢に閉じ込められたのである。
シャーロットは完全に面会謝絶にされて、牢を守るごつい衛兵と食事を届けに来る使用人以外と会うことは許されなかった。
わたしじゃないーー、何度言っても衛兵も使用人も信じてはくれなかった。
シャーロットは不安に押しつぶされそうになりながら、牢の中で膝を抱えてうずくまる。
(……アレックス殿下……)
アレックスは、シャーロットが犯人だと疑っているのだろうか?
そう思うと、心臓が嫌な音を立てて軋んだ。
毒はすぐに吐き出したが、今回盛られていた毒は厄介だった。
口に含んだだけだというのに全身に回り、全身がしびれて視界がかすんだ。
アレックスはしばらく安静を言い渡されて、部屋のベッドで横になってすごしていたが、シャーロットが捕らえられたことは知っていた。
(シャーロットじゃない)
彼女が犯人のはずはない。
シャーロットの部屋からアレックスが口にした茶葉と同じものが見つかったと聞いたとき、一瞬だけ過去の古傷がうずいたような気がした。
まさかーー、と思わなかったわけではない。
けれどもシャーロットにはアレックスに毒を盛る理由がない。何より、彼女は違うとアレックス自身が信じたかった。
シャーロットが捕らえられたと聞いて、すぐに助けに行きたかったが、絶対安静を言い渡された上に部屋の前の衛兵が見張っており、アレックスはもどかしい日々を送っていた。
「腐ってないか?」
体のしびれや倦怠感などが消えて、いったいいつまで安静にさせるのだと、いらいらしはじめたときだった。
「証拠、集まったぞ」
彼はアレックスのそばまでやってくるとにやりと笑った。
アレックスはすべてを聞き終わると、一度天井を見上げて息を吐いてから、ベッドから起き上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます