線香花火と金魚

祭りはもう終わったのか

子供たちは月を追い始めた

夏が溶けていく音は

いつだって空気を伝わらない


一年に一度この日だけは

ほんのわずかでも届くかもしれない

希望なのか絶望なのか

わからない印を求め続けて

ずっと木の根にしがみついている

僕は線香花火

この世で咲いたら

あの世で種になり

いつか芽が出るはず


迷い込み元に戻る音

駆け抜けていくついでに

誰かが捨てて行ったビニール袋

その中に黒い瞳

僕は見つけられた

少しずつ水が漏れ出て

魂を柔らかくする

狭間の世界で君は

どちらを選びたいのかな

水が抜けきっても

瞳には光があった


祭りはゆっくりと続いていく

僕たちは空間を歪ませて

夏を吸い込んだ

いつかは終わる終わらないいつか



(「無責任」第十八号より)

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