ゲーム

あまりにも鮮明な映像になって

世間ではゲームと現実の区別がつかなくなって

彼は世界へと飛び出した

憧れのアイスクリームを食べたくて

家中を探したのだけれど

どうしても見つけられなかった

冷蔵庫のことを知らなかったので

扉を開けることができなかったのだ

玄関の大きな段差を乗り越えて

靴の中を探索している時

辺りに光が充満した

画面の向こう側にいつもいる

少年が帰ってきたのだ

彼は入れ替わりに光の元へと飛び出した


世界は容赦なく彼を傷つけた

太陽の光も

吹きすさぶ風も

猫の鳴き声さえ

現実では過剰だった

それでも彼は外側へと向かい続けた

無謀な若者特有の根拠のない勇ましさは

彼を真理の傍らまで案内した

そこにはたった一つ

大きな乾電池が鎮座していた


気が付くと彼は画面の中に戻っていた

そこはそこで温かい場所なのだ

それども彼の想いは現実へと向かう

現代の若者はゲームに満足しないのだ



(「無責任」第一集より)

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