第35話 出陣前夜

夕食の席で


「ローズ 今まで黙っていて悪かったが、俺は明日出陣する」


「私も お供します」


「お前が一緒に来てくれれば 俺はうれしいが、馬車ではなく馬での行軍はきついぞ」


「がんばります。いざとなれば ジェッドに頼んで野営地から野営地にショートカットします」


「服装はどうするつもりだ」


「前に用意して頂いた服見本をもとに、ドローやエドガーが用意しているような気がします」そう言って 天井を見上げた。


「ローズ様随行の支度はできております」(ドロー)


「お前たち 裏でうちあわせをしていのか?」


「打ち合わせはしてませんが 出陣の予定は聞いてましたし、彼らも阿吽の呼吸で動くことには慣れているようだから。何も言わなくても 彼らは ある程度 私の頭の中を読んでいる気がします」


「ドローにそういう能力があることは認める」


「エドガーは?」


「あれは 気配察知だけだ。しかし いろいろと考える力はある」


「この世界では 希少だと言われている特殊能力者が ウィルのそばに二人、いえ魔法使いも入れれば3人も控えているのは どうして?」


「なりゆきだ」


「はあ」


「進軍についてくるなら 天幕はどうする?」


「夜眠る場所ですか?」

「ああ」


「私は できるだけ ウィルあなたのそばにいたい。24時間ずっと」


「うーん これが恋人の言葉ならよかったのだが・・

 移動中は 俺に随伴することを許す」


「ありがとう でも戦場でも私が希望するときはいつもあなたのそばにおいて欲しい」


「君の希望ねぇ」


「背後の敵に備える人間は多い方がいいでしょ」


「ならば 一つだけ約束してくれ どんなことがあっても取り乱さないと」


「戦場で取り乱したりはしません! 平時に戻ってからまとめてパニックしたら そん時は 塔の中にでも放り込んで落ち着くまでほっといでください」


「かわってる。時々 君はどういう過去を持っているのかと思うよ」


「未消化の過去なんて 長々しいので聞くもんじゃないと思う。

 幸いにも 過去の嫌な記憶が全然ない今の状態は 私にとっては とっても楽なんですけどねー。」


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