第33話  翌朝

ウィリアムと向き合って朝食を取りながら、ローズは言った。


「あなたは 水不足と水魔法との関係・問題点をすでにご存知だったのですね」

「ああ」


「この件についてマルレーンの考え方は?」


「あいつは 権力者の命じるままに水を撒くことが己の仕事。すべての責任は命じた者にありと考えているな」


「今この国に水魔法を使えるものは?」

「公式にはマルレーン一人。俺の知る限りでは3人」


「マルレーンがこれまでに水魔法を教えた者は?」

「俺の知っている範囲ではおまえだけだな。俺は自分で水魔法を覚えたから」


「つまり 現在 水魔法を使えるのは マルレーンと私とウィルの3人ということですか?」


「そうだ」


「そもそも魔法って 皆さんどうやって覚えるのですか?」


「わからん。俺が子供の頃に魔法学院はつぶれた。

 教師の教え方が悪くて生徒がだれも魔法を覚えることができぬからと言う理由で。」


「それに対して 教師たちの反論は?」

「学院がつぶれる前に 魔法の使える教師はさっさと 教会か王宮に転職していたからな。魔法が使えなくなった教師は それ以前に金を着服・横領して遁走していたし」


「当時 魔法が使えなくなる者がおおかっ」


「ストップストップ お前の質問はきりがない

 今夜 魔法学院の歴史と 魔法使いに関連することとかまとめて伝えるから

 今はここまでにしてくれ」


「んー 昨夜のやり方では まるでウィルが過去に読んだ本の中身を追読している程度にしかわからなかったんですよね」

「今みたいに質疑応答で得られる情報の方が精度も価値も高い」


「贅沢を言うな。こっちが1年かけて学んだことを 一晩でよみとれたことに感謝しろ」


「はい 先生」


「とりあえず 王宮内の書庫と研究部門への入室許可を出したから 今日は1日エドガーと一緒にあちこち回って 自分で情報収集しなさい」

 そう言ってウィルは許可証を私の首にかけた。

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