第30話 国境を越えて
つむじ風に吸い上げられるようにして国境を越えた。たぶん。
砂漠に取り囲まれた高い山のてっぺんに降ろされた。
10樽くらいに水を注げと言われた。
眷属たちもそれぞれの手で樽から水をすくって飲んでいる。
町に戻ったら コップを買って進呈しようかしら。
ちなみにセフィールだけは コップで水をすくって飲んでいる
そのカップって 私がさっき水を入れて渡したものではないかな?
「その時は 私達に自分でコップを選ばせてくださいね」優し気な声がした。
層雲ちゃんだ。
いつのまにか ほかの樽の水もぐんぐん減り出した。
なにか 白いもやもや ぽわぽわしたものが 周りに出現してきた。
「それでは このあたり一帯を統べる精霊を選べ、そうだな2人くらい」
再びセフィールから命令が下った。
「入道」「積雲」
白いもやもやをまとった人の姿があらわれた。
王はクスリと笑い、「次は この地で水分の運び手となる者達を」と言いながら
もやもや・ぽわぽわ達の方に手をふった。
「綿雲」「雨雲」「霧」「くもり」「おぼろ」「ひつじ」「うろこ」「うっすら」「すじ」
「えーと 1号とか2号とかって 数をふやしたほうがいいですか?」
「それは 我らで調整しよう」入道と積雲が言った。
この二人は 親子のように似ている大小コンピだ。
白い衣をまとい 頭の上には冠のように雲を載せている
足元にはしろいもやもやが漂っていた。
「だが わしらと同族の雲となるものもあそこから選んでくれ」とぽわぽわ達の方を指さしながら言った。
そこで 「ラン」「水雲」と新たに2種類を選んだ。
「ラン」は積乱雲や乱層雲になる子たち
「水雲」は 適宜姿をかえながらも『水滴を運ぶ』子達だ。
「水雲は使いやすい。ありがとう」と入道が言った。
「どういたしまして」
「それではお前 力の限り 水を樽に注ぎ、大気中に霧状の水をまけ」と風の王が命じてきた。
「湖とかため池を作らなくてお良いのですか?」
「地面に触れた水は ナイアードの支配下にはいってしまい 水魔法使いに奪われてしまうからな。樽に入れるか 我らセフィールに直接水を与えよ」
「ならば 広範囲に湿り気や熱を運ぶことのできる 風の精にもっと名付けたほうがよいのではありませんか?」
「おぬしにできるのか?」
「たぶん」
「ゼピュロス」
偏西風をつかさどる精霊に命名した。
「フェレル」循環する風の名前だ。
「あとで 北方の山や 海辺や 草原でも命名したいです」
「いいだろう とりあえず この砂漠を吹き抜ける風たちに水を託せ」
精霊達に 魔物と呼ばれる者達のもとに水を届け 今しばらく人間の地へは足を踏み入れるぬようにとの願いと共に水を託した。
霧雨状に水を宙にはなって。
きらきらとした 虹のアーチが大きく広がった。 3重のアーチだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます