第3章 風と共に

第28話 旅立ち

ウィルとの会話を終えたローズは 魔王に会いたいと思った。


なぜか

 ウィリアムの力になりたい。彼から危険を遠ざけたい。

 もちろんそういう乙女心はある。


 いくさは嫌! という正義感もある。


しかしそれ以上に、魔法の濫用によりこの世界全体が水不足におちいり、

この国へ水を引き寄せるために 魔王の住む地域の水不足が深刻になり、生きていけなくなったことが、魔物達がこの国に入ってくる根本的原因ではないかという気がしたからだ。


ウィリアムと水通信をとる前は、まずこの国をあちこち見て回って 「水」を巡る歴史的変化を学びながら、折を見て風の精霊と契約することにより 大気圏の水循環をしっかりと確認したいと思っていた。


そして 仮説をしっかりと検討してから 必要があれば魔王に会いに行こうと思っていた。


しかし 戦闘がはじまってしまえば そんな悠長なことは言ってられない、これが最後の決戦になったらどうしよう とびびってしまった。



「偵察には 鳥と仲良くすることをお勧めしますわ」ナイアードが言った。


そういえば つい足先を泉に突っ込んで ばちゃばちゃしながら悩んでいたのであった。

そのせいで 内心の思いが ナイアードにだだもれになってしまったようだ。


「鳥ですか?」

  残念に思いながらも 足を泉から出した。

  だって 泉の水に浸していると気持ちが良かったのだもん。


「向うの山は低いから いろんな鳥がいます。そこで仲間を募るとよいでしょう。」


「もしかして 鳥の精霊とかいるのですか?」


「動物に精霊はいませんが 神獣とか特別な力を持った鳥はいますよ」

「これからも わからないことがあれば 水に手を入れて質問しなさい。

 できる範囲で答えてあげます」


「ありがとうございます ナイアード様」


ローズは 歩いて泉から離れることにした。

  今度はドリアードや 特別な生き物たちに会えるといいなぁなんて思いながら。

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