第27話 ウィリアム 水通信を受け取る

ローズが旅立って2日目の夜 

 入浴中に風呂の水面から 急にタケノコが生えてきた、


水の筍だと思ったら そいつは急にローズの上半身になった。


「はろ~!」陽気に片手をふりながらそいつはしゃべった。


「ウィリアム 人払いしてる?ここでの会話を盗み聞きされたりはしない?」


「忍びが一人天井裏に。ドローだ。こいつは俺の目と耳だ 俺から離れん」


「他にはいない?」

「あたりまえだ!」


「わかった、じゃウィルとドローと私の3人だけの秘密ということでよろしく!」


「はぁー お前 今 己がなにをしているのかわかっているのか?」


「水魔法使いの修行終わりました。マルレーンさんからは さようならを言われました。彼女と私の子弟契約を結んでくださってありがとうございます」


「ナイアードのことは ドローも知っているから自由に話していいぞ」


「ありがとうございます。」


「ナイアードから旅立ちの許可をもらったら いつでも王宮に戻ってこい。

 待っている」


「その件なんですが」

「んん?」


「少し お国のあちこちを旅して回ってもいいでしょうか?」


「なぜだ?」


「もっとよく知りたいのです」

「一度王宮に戻って来い。装備や護衛の用意が必要だろうが!」


「たぶん 戻らなくても大丈夫だと思います。

 っていうか 困った時に帰る場所は ウィルのそばしかないわけですから

 そのへんは 安心して待っていてください ってへんかな?」


「・・・水魔法を覚えたのなら 川を使った連絡ができると思うが・・・」


「それだと 連絡時間を決めないと王様と話せないでしょ。

 この方法だと 王様が入浴するときにあわせて連絡とれるから こっちの方がよくない? 私もウィルの顔を見たいし。

 保安上も このやり方の方が 王様にとって安全なはず」


「保安上の利点は理解したが・・ おまえ 俺の裸を見たいのか?」


「意味不なこと言わんでください。そっちからは 私のミニチュア水人形の上半身しか見えず 私からはあなたの顔しか見てませんよ。それも目のあたりしか。

比率の関係で ミニチュア人形の視界は狭いのです。」


「そうか つまらぬ冗談を言って悪かったな」


「とにかく早く帰ってこい。あとひと月もしたら 俺は出陣するかもしれん」


「王様が! どこへ?」


「魔王退治だ。それが王の使命だと 教会勢力に言われたよ。」


「魔王の居場所はつかめているのですか?」


「北西の山岳地帯だ。」


「進軍予定コースや日程も思い浮かべながら、王都と魔王の居場所を含む一帯の地図を送ってください。 水面に手を当てて」


「お前 ・・ わかった」

  ウィリアムは 動きを止め 水面が静かになってからそっと 掌を水面にふれさせて 情報を送った。


「王の出陣に間に合うように王都に戻れるかどうかはわかりませんが、進軍途中に合流できるように 私も準備を急ぎます。 それではお元気で。ご武運を!」


ローズの水人形は 水に溶け込んで消えてしまった。



ウィリアムは天井を向いて声をかけた

 「ドロー 久しぶりに背中を流してくれ」


湯舟を出て、洗い場のイスに座って背中をこすってもらいながらウィリアムは言った。

「あいつ 何人の精霊と契約して帰ってくると思う?」


「何人かではなくて 何種類の ではないでしょうかねぇー」


「もちろん全種類だろう。時間さえ足りれば」


「王の力になりさえするのなら 何人だろうと何種類だろうと 私は気にしません」

 

 


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