第26話 水の魔法使いのお仕事

しずく達のご挨拶が一段落した。


「お師匠様 まだ来ないなぁ」川辺に座ってぼそっとつぶやくと

ナイアードのお姉さんが出てきて、川を伝送管のように使って連絡を取る方法を教えてくれた。


トントン 水を人差し指で叩いてお師匠様とよびかける。

「ローズ! 今どこにいるの?!」


「私のもとに来て もう水の精霊との契約もすませましたよ」

私のかわりに ナイアードが答えた。


「まあ では あとのことは あなたに任せるわ。さよならローズ」


えっ?


私からのあいさつを受け取ることもなく お師匠様は川から離れてしまった。

うっそ~~~~~!


ナイアードが説明してくれた。

 マルレーンは 弟子の卒業試験として、①ナイアードに認められること ②水の精霊と契約すること を課しており、いつもは この山のふもとで、弟子に別れを告げていることを。


今回は 私の前進が早すぎたので、別れを告げるまもなくマルレーンとの弟子契約は終了していたらしい。


「でも 私はお師匠様と弟子契約した覚えもなくて お師匠様はずっとお師匠様だとばかり思ってました」


「あなたとマルレーンとの契約は ウィリアム王が結びましたからね。

 その時 あなたの育ち方は予想外の軌跡をたどるかもしれないから、

 あなたが一直線にここに来てしまった場合は、私が「水の魔法使い」の立場についてあなたに教えるように頼まれました。」


「つまり これからは マルレーン様が私の先生になるのですか? ウィリアムの依頼で」


「私はナイアード。この地の水とこの地で生まれた水の魔法使いの支配者」

「この地の王は みな 私のもとに挨拶にくることになっています」


「そうなのですか。私のこれまでの行動でご無礼・失礼な点がありましたらお詫びいたします。」


「この国では 15歳になるまでは皆子供。こどもの無知は許されます。

 あなたは 見た目まだ13歳くらいでしょう。」


「えっ そうなんですか?」

「ちがうのですか?」


「自分では もうちょっと上の年齢だとおもっていたのですが・・・

 過去のことについて思い出せることがどんどん少なくなってきているので よくわかりません」


「では あなたのことは12歳のこどもとして 教えましょう。

 この国では 社会について学び始めるのがその年齢ですから」


そう言って ナイアードは この国のしきたりや暮らしや 日常生活を送るうえでの常識をいろいろと教えてくれた。


「ナイアード様は どうしてこの国のすべてについてそんなにお詳しいのですか?」


「人は水なしではいきられませんもの。水のあるところから 情報はつたわってきますから」


そう言って 水鏡みずかがみの使い方 水を使って直接見聞きする方法を教えてくれた。


水を使って遠方に居る人と直接会話したいと言ったら、そういうオリジナル魔法を試すのは、ナイアードからの教えをすべて受けてからにしなさいと言われた。

 「はい 先生」

(やはり教える側のペースを乱してはいけない。教えてもらえるはずのことが教えてもらえなくなるから)


ナイアードによると、この国で、「水の魔法使い」に一番期待されることは、水不足の解消なんだそうだ。 早い話が農場への散水と 水不足の街で水甕に水を満たすこと。

だから 空から雨を降らせる魔法を使う私は たいへん重宝されるであろうとのことだった。


「先生 質問!」

「なんです」


「水魔法で出す水はどこから来るのですか?」

「それは 大気中に散らばっている 目に見えない水や、精霊達の能力で どこかの水源から引っ張ってくる水ですね」


「では 水魔法で 水をひきだせばひきだすほど、大気は乾き 近隣の水源が枯れていくのでは?」


「・・・・・」


ナイアードは少し考えこみ

「私は この泉の水の届く範囲のことしかわかりません。

 この泉の水が枯れないように この国の外から水を引っ張ってくるのが私の役目。

 この国の外がどうなっているのか知りたいのなら・・風の精霊におききなさい」


「はい」

「もう一つ質問があるのですが」

「なんです?」


「増水した時に 川の氾濫を止めることを求められたりはしないのですか?水の魔法使いには」


「この国で 川が氾濫するのは もう長いことみたことがありませんね」

「それに 水の流れを遮るのは 土。

 そういう仕事は 土の魔法使いにまかされているのではないかしら」


「そうですか」

(川が大きく蛇行しているということは かつては水量も多く 水が勢いよく川を流れていたのだと思うのだけど・・その蛇行した川筋を 小川のように水が流れ続けているということは 昔に比べてずいぶん水量がへったのかもしれないなぁ。)


「先生! 海につながる川は何本ありますか?」


「海?伝説はきいたことがありますが・・私は海を知りません。

 海につながる川もありません」


えっ?


「川の終点はどうなっているのです?」


「川の終点は・・いくつかの街の中心にある井戸でした。

 今つながっている井戸は一つだけ。その井戸につながる川も1本だけ。

 昔は 大河から流れる水が 支流として枝分かれして 各町の井戸につながっていたけれど、今は 支流の途中の河床の中に 水はしみこんでそこが終点になっているわ」


「それって ものすごく 水不足なのでは?」


「どうかしら ウィリアムからは感謝のことばしかもらってませんよ。

 ウィリアム以前の王たちが ここに来ることは久しくなかったので知りません」


(にゃんかすごくむつかしい話を聞いたきがするにゃ~~~~)

      

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