第25話 夜半の月 (ウィリアムの想い1)

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 いくさに勝利してまだ半年もたたぬ王であるウィリアムの日常は忙しい


若造わかぞうあなどる司祭どもが勝手に召喚の儀をやらかし、一人の娘を異世界から呼び寄せた。


まさか神子召喚の儀が成功するとは思っていなかったが、呼び出されたのが美しい娘

 精一杯虚勢きょせいを張ってはいるが、そこがまたかわいらしく見える実に初心うぶな娘であった。


呼び出されてきた時は あまりに美しい顔立ちと初々ういういしい裸身に ついみとれてしまったのだが、あとから それが死ぬほどの恥辱だったと聞かされて、これは生涯かけてつぐなわねばならぬと思ったときには すでに恋に落ちていたのだろうと、今にして思う。


かくいうウィリアムも 幼いころから勉学と武術の訓練にあけくれ、女性といえば

時折面会を許される母のみ、やっと元服して大人の社会に足を踏み入れようとしたときに、父が謀殺され 王位を簒奪さんだつされ気が付くと故国は隣国に攻め滅ぼされていた。


しかし 幼いころから鍛えた体と技にモノを言わせて、山賊を従え、ごろつきを打ち据え、気が付くと一軍の長として王国を回復していた。

 そして王位につくやいなや 例の召喚の儀=反ウイリアム派の旗頭とすべく聖女を呼び出す試みが 起きたのであった。


幸い ローズ(仮名)と名乗る異国の巫女は ウィリアムについて王宮にはいってくれた。


最初は自殺されてはかなわいからとわがままをきいてやったら・・

 光の精霊と契約を結び 勇者も顔負けの身体能力を発揮し、みるみるうちに武術も身に着け始めた。

 実戦経験のない上辺うわべだけのおままごと のはずが・・

 いざという時には どこかに隠れて生き延びられそうなくらいには育ってくれた。


一方ローズにかまいすぎて 王としての仕事が山のように積み上がり、雪崩が起きそうな状態になったので、ローズと距離をとるために、本格的に魔法の稽古をさせることにした。


普通杖を使った魔法など 1年か2年 塔に閉じこもって訓練に励まねば身につかないはずなのだが・・・

あっというまに 師匠に選んだマルレーンと一緒に卒業旅行にでかけてしまった。


マルレーンは 水の使い手なので、おそらく修行の旅の最後は 水の精霊との契約になるのであろうが。



ローズが出て行って 丸1日たった。

 あの子は 今 どうしているだろうか?

  月が 鏡のようにローズの姿をうつしだしてはくれぬだろうか?


 ※ 夜半よわ ←表題にはルビがふれないので・・


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