第16話 異世界デビューは コスプレ選択から
私が朝食をほぼ食べ終え、デザートの梨(のようなもの なんとなくこの世界と私が元居た世界の食材の名前は同じ気がする。味や形状は少し違うが)を食べていると
ウィルは口を拭い「デザートは お前が好きなだけ食べろ」と言った。
「横でバタバタするが許せ。その方が 成り行きがわかりやすいだろう」と告げて 王はベルを鳴らし、人を呼び寄せた。
「エドガー 宰相にこれを。9時にここへ来るようにとの呼び出し状だ」
「ドロー 神子様の服を持ってこい」
エドガーと入れ違うように 天井から男が飛び降りてきた。
「この男は俺の直属部隊の一人 ドローだ。
お前の服選びを命じていた。」
「お初にお目にかかります。
実のところ召喚される方の性別が事前にはわからず お召し物の用意ができておりませんでした。
そこで最初のうちは 元居たところのお衣装をまとっていただく予定だったのです。
御光臨いただきました神子様が 剣を携える姫様でしたので
お気に召したものを選んでいただければと・・」
一礼して ドローは扉を開け、台車を押した男を中に入れた。
男は 台車を 奥まで運ぶ。
私はごちそうさまをしてウィルを見上げると、彼はコテンと首を倒して寝室を指し示すので立ち上がった。
ドローは男にテーブルの片付けを命じると、率先して台車を寝室に運び込んだ。
彼はベッドシートを広げるとその上に 次々と衣装を並べ、トレーに載せた付属品も添えていった。
「勇者 魔法使い 魔法剣士 剣士 巫女装束 令嬢スタイル お好きなものをお選び下さい。 アクセサリーなどの組み合わせ希望もあれば おっしゃってください」
なんと 異世界デビューがコスプレ選択から始まるとは!\(◎o◎)/!
「これって 途中変更とか複数選択とかできますか?」
「あと 冒険者スタイルとかありませんか?」
「冒険者スタイル?」
「動きやすくて洗濯が簡単で着替えをたくさん用意できる庶民的
「それは 今後ご相談の上ということで できれば王宮デビューには礼装で」
「服のちがいにより 今後の所属とか待遇がかわったりする?」
「お前が俺の庇護下にあることにかわりはない。
ただ 巫女装束では神聖さを期待される。勇者スタイルならすぐに討伐隊に先頭にたつことを 令嬢スタイルなら花嫁修行を期待されるな」
「お前の気分次第で これらの服すべてを順に着ても構わぬが とにかくお披露目の時にはどれを着るか決めてくれ」
魔法剣士に添えられていた刀を持ち上げ抜いてみた。
キラキラとして金色の粉のようなものが飛び散った。
刀そのものは軽いが 宝石がちりばめられた鞘が重い。
軽く振ると 刀から炎が出たり 水が出たり。
室内なので雷等々をイメージするのはやめておいた。
刀を鞘におさめ 掌をたてて「修復」と念じると室内は元に戻った。
(これって もしかしたら精霊魔法? やったー!)
それにしても疲れる・・・・
刀をベッドの上にもどし、魔法使いスタイルのトレーから杖を取り上げ
人差し指で軽くたたいて「回復」と念じると 体が楽になった。
「ウィリアム 杖や魔法剣について学びたいです」
「手配する」
「それに この刀の使い方も習いたい」と言って昨日 神官から受け取った刀も持ち上げる。
「 いいだろう」
「あなたが履いているようなシンプルなズボンとシャツの上からロープを羽織り
この刀を差すのではだめですか?」と昨日の刀を持ち上げて見せる。
「なぜ 杖と魔法剣を帯びないのだ?」
「使い方のわからないものを携帯したくない。それに魔宝剣の鞘が重すぎる。
この刀と魔宝剣の両方をうまくさせるかどうかわからないし、
そもそも性質の異なる3つの武器を一緒に持って安全かどうかわからない」
「こちらの巫女装束がダメな点をお聞かせください」とドロー
「それって 法被にはかまもどき 生地が薄すぎるし 着るとたぶんドレンと垂れ下がり 隙間風がはいりそう。巫女の着る服は もっと神聖なものだし 形式美があるし そもそも神と人をつなぐ神事にしか着用しません。 世俗のお披露目に着ることはないし こちらのものとは違いすぎるので。」
「見知らぬ土地で見知らぬ衣装を着るなら これ以外の服を選びます」
「なるほどな」
「俺が この娘くらいの背丈だった時の礼装その他を持って来い!」
「はつ」
ドローは退出し しばらくすると箱を持って戻ってきた。
箱の中には 真っ白な騎士服が入っていた。
ウィリアムは 純白のズボンとシャツ フリルたっぷりのブラウスをとりだし
勇者セットの緋色のマントを添えた。
この服装で神剣を帯びるがいい。
ドローに杖と魔法剣を捧げ持たせて付き添わせよう。
「悪いが 侍女の用意がまだできぬゆえ エドガーに着付けの手直しをさせる。
異性では困るというのなら あとで去勢してもよいぞ」
「物騒なことを言わないでください><
不埒な真似をしなければ エドガーの性別には目をつむりましょう」
「では 早速着替えを」
「しばらく一人にして下さい。着替えの前に髪を洗いたので」
「ならば杖を使って 水や湯・風を出してみるとよい
杖が濡れたら これで拭くとよい」と言って胸元からハンカチを取り出し、
ウィリアム達は出て行った。
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