第15話 既成事実の有無

ついつい手が伸び 勧め上手なウィルに甘えて とうとう菓子を一袋食べきってしまった。


小腹が満たされると 再び眠気が。


「子供みたいなやつだな」とウィルに促され、再び寝室のベッドに放り込まれてしまった。

「しっかり休め。」と言って上掛けを顎の下まできちんとかけられた。


「俺を信用しろ」ということばを残しウィルの立ち去る気配



引き込まれるような眠りから覚めて横を見ると、ベッドの上掛けの上に横たわるウィルが居た。それも帯剣・靴を履いたままで。

 ???


扉をしつこくノックする音もする。


「どなた?」根気よくノックを続ける人が気の毒になって声をかけた。


「朝食をお持ちしました」

「ありがとう。朝食を置いたまま 皆さんは 廊下までお下がりください」


「そちらに陛下はいらっしゃいますか?」

「休んでおられます。なにか急用でも?」


「失礼しました」



振り向くと ベッドの上のウィルが体を起こした。

「どうやら これで 既成事実ができたようだ」


「それが目的で 回りくどい手を?」


「失礼な。成り行きに乗じただけだ」


「既成事実ができた時とできなかったときの違いは?」


「既成事実があると思わせておけば、この先 お前にちょっかいを出す男はいなくなる。代わりに おまえは 誰とも結婚できなくなる。

 もっとも すべてが終わったあと 既成事実はなくあれはみせかけだったと正規の手続きで証明すれば お前は お前の選んだ男に求婚して相手が受ければ結婚できるが。その手続きはけっこうめんどうだ」


「既成事実がないと思われている間は お前と無理やり既成事実を作ろうとする男達がしつこくつけねらってくるだろうな」


「そういうことは 事前に説明の上 えらばせてくれるとよかったのですが・・・」


「子供のお前に 既成事実がなかったことの証明方法について説明する勇気がなかった。許せ」


「なんか 怖そうな話ですね。 とりあえず あなたが信頼する者達には 」


「こういうことは あるかないかの2択の公表しかできん!」


「好きにして下さい! いざとなれば自決するか 男どもすべてをぶっ殺すかの2択ですから!」


「わ わかった 早まるな。悪かった。 とにかく朝食だけはしっかりと済ませてくれ」


王はダッシュで隣室への扉を開き 朝食をサーブした。

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