第2話バレンタインチョコをもらった時

10分間の思考停止時間を終えて、意識を取り戻した。

この状況を整理すると、

①岸野はチョコをもらった

②ただしここは男子校である

③ちなみに女子はいない

④男子が岸野にチョコをあげた可能性が高い

⑤さらにチョコの入る袋には、愛を綴るメッセージもついていた

ここから導き出されたことに、もう一度失神しかけた。


キーンコーンカーンコーン


チャイムの鳴る時も気づかず、授業開始1分に、教室に戻った。

チャイムが鳴ると同時に先生が教室に入り、それと同時に息をはずませた僕が教室に入った。


「遅刻ですね。」


名簿を開き、刻むように、僕の遅刻の記録を書いた。

あ~あ、と残念そうな声が教室を響かせた。


(あれ、なんかこれ、デジャヴ・・・?)


僕は授業中も、ひたすらあのチョコのことを考えていた。

そのため、”めずらしく”授業は集中できなかった。


昼休みになって、僕は岸野の席に目を移した。

彼は、呆然とした様子で、チョコを口に放り込んでいた。


「ちょっと、岸野、屋上に行こ?」

「お、おう」

僕は、岸野を連れて屋上に向かった。


弁当を食べ切ったあと、聞いた。

「ねえ、ここりあたりある?」

「ないから悩んでんだよぉ・・・。」

「あ、そうか。」

「これくれた人になんていえばいいのやら・・・」

「いや、岸野がいやなら、振ればいいじゃん」

「それはそうだけど」


「ん?」

屋上の入り口に人影を感じ、振り向いた。

でも、誰もいなかった。

まあいいや。

岸野の問題であって、僕のことじゃない。

よって、僕は気にする必要がない。

すがすがしい気持ちになって、屋上を後にした。

「じゃあね」

「お、おい、待ってくれよぉ~」

一人で何とかしろっ。


教室に戻った時、大人数からの注目を感じた。

近くにいるクラスメイトを捕まえて聞いた。

「えっと・・・なに?」

「いや、なにもない」

なんなんだ?


そして、授業が始まる前にも、教師に、にやにやしながら見られ、どういうことかわからなくなった。


授業が終わり、僕は、さっきのクラスメートにもう一回尋ねた。

「なんで、こんなに注目されてんの?」

「いや・・・」

「答えないの?じゃあ別にいいけど夜道に気を付けてね。」

真っ青になったその子は、言い出した。

「岸野君と君、付き合いだしたんでしょ?」

え・・・?

「噂によると、君がチョコを岸野君に渡して今日屋上で告白して、振られたんだけど、弱みを握っているから、それを使って脅して付き合ったって聞いたけど・・・」

ん・・・?

「それを言い出したの誰?」

「わからない」

でも、それを言い出した人は、いるはず。


・・・ちょっとまって。

生徒から先生には、ほとんど情報はいかないはずなのになんで先生まで知っているの?!

考える可能性は2つ

1.先生に情報をわたすスパイ的な人がいる。

2.先生が情報を得るほどに、この情報が広く充満している

・・・どっちともいやだ。

せめて1であってほしい。

でも、その希望を打ち砕くことを、彼は言った。

「この噂、結構広がっているらしいよ」

はい、もうだめだぁ・・・


※岸野と主人公が付き合っていると、クラスメイトが勘違いした理由


チョコを、岸野が呆然としながら食べている・・・男子からもらったと解釈

主人公が、岸野を屋上へ連れていく・・・告白と解釈

(詳しく明記してないが、主人公が見た人影は、クラスメイトの人たちである)

主人公が、元気よく別れの挨拶をするのに対して、岸野が暗い顔をしている

・・・岸野の弱みを握り、主人公が告白を無理矢理承諾させたと解釈


・・・とこんな感じです。


おまけ・告白したと思った、クラスメイト達(屋上にて)


「おおおおおおっ。」「岸野が告白されたぜえ~~~~~。」

「いや、山口あくどっ」「岸野がちょっとかわいそっ」

「付き合ったのかぁ?!」「ヒュウウウウウウウウウ}

「初の男子のカップル!!」「やばいぜこれ!」

「いや~、青春はいいのお~」


と、騒ぐ男子たち(彼女いない歴=年齢)であった。


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