バレンタインデーの騒ぎは白内中学校で起きる

水野 健吾(みずの けんご)

第1話バレンタインチョコをもらう場所

「おはよー」


 ここは僕たちが通う、白崎中学校。

 友人である、垣内裕太を見つけ、声をかけた。

 教室内は、どことなくそわそわしている。

 なぜなら、今日は2月13日。

 バレンタインデーの前日。

 そわそわするのもわからなくもない。

 裕太は、陰ky・・・ぐはぁっ。

「え?なに?」

 にっこりと笑いながら、僕のみぞおちにダイヤよりも固いといわれる、拳をくいこませていた。

「いえいえ、そんなことまったくございません。」


 では、あらためて、

 裕太はおとなしめの男子であり、近寄りがたいオーラをまとっている。

 それでも、なぜか、陽ky・・・ではなくて、岸内という、明るい男子と仲がいい。

 まあ、気に留めることでもないので放っておいている。

 そういえば、と思った。岸野がいない。


 キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴ると同時に先生が教室に入り、それと同時に息をはずませた岸内が教室に入った。

「遅刻ですね。」

 名簿を開き、刻むように、彼の遅刻の記録を書いた。

 あ~あ、と残念そうな声が教室を響かせた。


 どんな子守唄よりも絶対に効く、授業を乗り切り、昼となった。

 睡魔に襲われ、教師という名の死神に殺された戦士たち(生徒)よ、安らかに眠ってくれ。

 僕は、裕太を連れて、屋上に向かった。(うちの学校では、屋上で昼食をとることは容認されている)


「うんま~~~~~。生きててよかった~~~~~~~~~~~~~」

 僕は、唐揚げをほおばり、歓喜の声を上げた。

(やかましい、このいきり陰キャ。という声が隣から聞こえたのはなぜだろう。)

お弁当をパパっと食べ終わり、階段を降りようとしたところで、岸野とすれ違った。

「俺、これから昼飯食いにいくわ。じゃ。」

「じゃあ。」


昼休みが終わり、死神と睡魔(満腹感によって、力が倍増)と戦いながら、午後の授業を終わらせた。


僕は、先に帰る、と言ってさっさと帰っていった裕太を見送り、睡魔にあっさりと白旗をあげた。


2月14日、つまりバレンタイン。

この日、岸野はずっとおかしかった。

授業は比較的、まじめなほうだった岸野が、

「はい、じゃあ、簡単な問題いきます。岸野君、光の進み方を三つ答えてください。」

「はい、伝導、放射、対流です。」

などと、とんちんかんなことを言っていた。

(答えはもちろん、屈折、反射、直進だよ?)


僕は2時間目が終わり、休憩時間の時に廊下に出て聞いた。

「ねえ、岸野、どうしたの、今日。」

「今日はバレンタインデーだよな?」

「そうだよ。」

「俺、バレンタインチョコをもらっちゃたんだけど・・・」

気まずい沈黙が流れた。

普通だったら、ここまで沈黙しない。むしろ、岸野なら、舞い上がっていただろう。

でもここは———。

「こ、ここって男子校、だよね?」

ここは男子校である。

再び、気まずい沈黙が流れた。


おまけ・机の中に隠されているチョコを見つけた岸野


えっと、なにこれ、あれ、ちょこ?ん?ちょこ?

あれ、きょうってなんようび?あれ?ばれんたいんでーだったか。

うちって、だんしこうだったよね。

えっと、うんと、これって、その・・・。

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