第6話 王都がやばいことになってんな!

 しばらくぶりに見た王都は、それはもう酷い有様だった。そこかしこに火の手が上がり、魔物と人間が殺し合いをしてやがる。あっちこっちに死体が転がっていた。


「あ、ああああ! これって……こんな、こんなことって」


 瞬間移動で一気に戦場に転移した脳内お花畑ボインボインは、あまりの惨状にビビって声を上げていた。


「今確信を持ちました。あなた様はもう、私の主に間違いありません。魔王術をお使いになられたのですから」

「え? もしかして私が使ってたの? っていうか、レックスー! レックスがついてきちゃったよぉ」

「はい? こ……この大きなゴリラは一体!?」


 二人は背後にいる俺を見てビビリまくり。もうそんなことには構ってられん。早くバナナの供給元を守らなくてはいかんのだ。さらば。


「グウウ……ガアアアア!」


 俺は戦場の真っ只中を走る。要するに攻めてきた連中をぶっ飛ばせばいいんだろ。久しぶりに暴れてやるぜ!


 とにかく俺自身にとって、国が滅んじまうとか、人命がどうとかはまったく関係ない。ただ美味い飯が支給されなくなっちまうことは嫌だからな。


 王都の中には大量の魔物が侵入してやがった。兵士や冒険者達と混戦になっているのは、トロルやオーク、ゴブリンやリザードマンといった雑魚がほとんどだが、中には大物もいるようだ。


 まあ、誰がこようと関係ないっちゃ関係ない。俺はあらんばかりの咆哮を上げながら、四足状態で猛烈なダッシュをする。遠くからボインボインや元部下の声が聞こえたが知らん。お前らは好きにしてろ。


「グオオオ!」


 ほとんどのモンスターは俺が走り回るだけで勝手にぶっ飛び、勝手に死んでいきやがる。しかし俺の足も早くなったもんだ。街中を縦横無尽に駆け回り、気に入らない野郎をぶっ飛ばしまくるのは悪くない。


「ギャアアアア!」


 どっかで見たことのある象モンスターが悲鳴を上げて飛んで行きやがった。そういや空に浮かんでる黒い天使どもやガーゴイルとか、デッケエ鷹ともいるんだがどうっすかな。


「この化け物めが! 敵対するなら殺すまで」


 空を飛んでやがる天使が台詞を放った後、一斉にこっち目掛けて攻撃してきやがった。特に黒い天使どもは、不意に矢を飛ばしてくるから鬱陶しい。炎魔法とかも空から飛ばしてくるわけで、だったら俺も魔法で……と思っていると、城の二階辺りに面白いもんをみっけた。


 俺はジャングルジムよろしく城壁をひょいひょい駆け上ると、見るからに巨大な黒い大砲に手をかける。近くにいた兵士が焦ってこっちを見上げて、


「ちょ、ちょっと待て!? それは我が軍主力の魔導砲ガットリング——」


 とか抜かしてきたが知らん。っていうか、さっきから全然使えてねえじゃねえか。そのまま両手で固定されていた部分から引き剥がし、俺は魔導砲を上空に向けた。

 お前らなかなか面白いもんを作るじゃねえか。使ってやるぜとばかりに引き金を引くと、大砲の先端から何重にも魔法陣が現れ、おまけにそれがグルグル回り出した。そうかそうか、これは使用者の魔力を使うっつー代物だな。だったら俺向きじゃん。


「うあああああ!」

「ひい!? なんだあれはあ!?」


 魔導砲を空飛ぶ連中に向け、とにかく撃つ、撃つ、撃つ。すげえ威力と連射力だ、気に入ったぜ。飛ぶ鳥を落とすのは難しいが、規格外の連射と玉が巨大なコイツなら意外と簡単。思っているよりあっけなく軍勢はどんどんやられていく。


 まあ、ほとんど俺がやったんだが、これならもう手伝わなくても勝てるか? じゃあ帰ってバナナが支給されるのを待つかな———って思ったんだけどよ。


「ウホッホ! ウホホホ!」


 遠くからギガースとか巨大な鷹みたいな奴、それから飛龍が向かってきてやがる。面白いじゃねえか。


 ポポポポン!


 俺はドラミングをしてから魔導砲を奴らに構えた。なんて気持ちいい武器だろうか。癖になりそうだぜ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る