僕が恋した嘘つきさん達

心月みこと

プロローグ

「暗いな。寒いな。今春なのにな」

 集団とはぐれてしまい、挙げ句の果てには財布までもどこかになくしてしまった馬鹿な私。隣には他 校の男子が一人いるだけ。自分に絶望している私を慰めようと、彼は当たり障りないことを口にした。


 右手につけたデジタル時計が点滅し、午後の七時だと教えてくれる。私と他校の彼は人気のなくなった神社で先生を待つことにした。

 鳥居の外にでて、階段に腰を下ろすと思っていたよりも夜景が綺麗で、私達がそれほど高いところにいるのだと実感させられる。不安で胸が押し潰されそうな気分。彼の漏らした声に言葉を添えることなんて出来ない。


 漫画や小説ならこんな最悪すぎる状況でさえも、楽しく見れるというのに我が身をもって体験してしまうと、とてもみれたものではない。


「星…綺麗だな。てか、やべーな。星ってこんなにあったんだな、知ってた?」

 私はまた、無視を決め込む。無神経な彼と話すことはきっとストレスになる。


 そもそも、彼が私なんかと同じ状況に陥っているのは彼の自己責任なのだ。ただ、そうは思っても私は感謝しなくてはいけない。彼の事は何も知らないし知りたいとも思わない。けれど、この場に私が独りぼっちだったらきっと耐えられない。それでも耐えなくてはいけなくなるんだ。そんなことを想像するだけでも今より数倍怖かった。


 だから、彼がいてくれて本当は心強かった。

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