第38話 んあ~!!これダメだぁ~!!

ボクはお話しを思いついた瞬間が一番好きだ。

「あ~、なんか面白いの思いついちゃった!!」

 そうやってニヤニヤするのがたまらなく好きだ。


 1話完結型の話を思いついた。

 お話しを書いてみようと、ノートにいろいろ書き出してみる。

「登場人物は何人必要かな~?えーっと、1,2、3…全部で5人は必要かな~?」

 その後はその登場人物の名前を考える。

 1話完結型だ。それほど名前も真剣につけるつもりはない。

 なんでもいいわけだ。

 それなのにちょっと真剣に考えている自分がいる。

「ボビー、ボビー…う~ん、ボビーはねぇなぁ、さすがに」

 そう言いながら、結局ボビーとほとんど差がない名前をつける。


 名前を決めたら同情人物の役割をより具体的に。

 もちろんふわふわな世界観も固めていく。

 でも、集中力がないボクはしびれを切らしているのだ。

「あ~、めんどくさい。めんどくさい。早く書き始めたい!!」

 そんなことを思いながらノートにぐちゃぐちゃ書いていく。

 今まで少なからずお話しを書いてきて、事前準備がいかに大切なのか分かっているのに…

 経験をしているのに学ばない典型的な例だ。

 非常に嘆かわしい。


 そしてもう我慢できず、張りぼてのような状態でスタートしてしまう。

「よし、書こう!!」

 正直、いつもこんな感じだ。


 意気揚々とキーボードに打ち込むが、

「ん~?あれ?ちょっと待てよ」

 案の定止まる。

 でもこれはこの題名にある通り、いつも通りのことだ。

 平常運転である。

 しかめっ面しながらボクは書き上げていくのだ。

 全然問題ない。


 しかし、稀にそれを飛び越えるときがある。

 何度でも止まる。

 何度でも消す。

 何度でも書き直す。



「………ふぅ」

 そして悟る。

「んあ~!!これダメだぁ~!!何度やり直してもダメだぁ~!!お蔵入りだぁ~!!」

 どうやっても面白くならない。

 この瞬間はいつもげんなりする。


 まぁ正直なところ、途中から気が付いてきているんだよね。

「あれ?これってあんまり面白くならないんじゃね?」

 って。

 そう、気が付いているのだ。

 でも、せっかく浮かんだアイデアなんだからって。貧乏性かな?

 無理やり形にしようとする。


 でも結局、

「あ~、ダメだぁ~!!」

 ってギブアップする。


 ここはきっぱりと諦めて次に行かないと。

 でもその前に…創造主としてやっておかなければならないことがある。

 それはキャラクターたちへお蔵入りを告げることだ。


 ここは一話完結のお話しの世界。

 しかし、まだ完成していない。

 簡単なリハーサルを終えたキャラクターたちは本番を待っているのだ。


「ん?なんかさっきから創っては壊しの繰り返しだったけど…止まったな。でもまだ全然お話し出来上がってないぞ」

「あれだろ?いつもの息抜きじゃねぇの?長い長い息抜き」

「う~ん、まぁそういうことなら仕方な…ん?」

 そこへ近づいてくる足音。

 そしてキャラクターの前に登場する。

「や、やぁ」

「あ、しょうが焼きじゃん!?どうしたんだよ、こんなところまで来て」

「皆さんおそろいで…お疲れ様です」

「まだ何もしてねぇから別に疲れてねぇけど」

「あはは…そうですね。あの…えーっとですねぇ、あのぅですねぇ…」

「ん?なんだよ?どうしたんだよ?」

「…皆さん!!今回のお話し、お蔵入りになりました!!」

「なぁんだとーー!?」

「ごめんなさい…ごめん。ボクの力不足です…あ、でも絶対に次に生かすから。うん、ごめん!!」

「おい、しょうが焼き!!ちょっ…待…」

 ボクは一方的に告げて、保留というフォルダーを作って、そこにお蔵入りとなったお話しをダンクシュートする。


「保留」

 ボクはフォルダー名を「ボツ」という名前にはしない。

 いつか日の目を見ることを夢見ているのだ。

 だからボクは「保留」という名前に「する。


 しかし…知っている。

 キャラクターたちは知っている。

「保留」の前にある言葉がつくることを…

「ずっと保留」

 恐ろしや、恐ろしや。

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