第31話 冷静になると恥ずかしさを感じるときがある
時々お話を書いていて、ふと我に返る時がある。
「ははっ、俺なんかがお話を書いちゃってるよ」
こんなときは決まって恥ずかしさを覚える。
一体なんなのだこの恥ずかしさは (笑)
自分がお話を書いていることに対して、冷ややかに笑ってしまうボクがいる。
「何だ?この世界観は?」
そして自分が創った世界観を冷たく評価する。
でも小さい頃は違った。恥ずかしさなんて感じなかった。
小さなボクは文字が書けない。でも自分の頭の中で物語を作っていた。
「正義」と「悪」という単語を覚える前のボクは、おもちゃを「いいもん」と「わるもん」に分けた。
そしてそのおもちゃを両手に持って左手と右手で戦っていた。
自分の描いた世界観に浸っていたのだ。
「この白線から落ちたら死んじゃうからね。白線から出ちゃダメだよ~」
白線から落ちないよう友達と一列になって歩いて帰った小学校低学年の頃。
めちゃくちゃ楽しかった。
それがいつの間にやらそんなことはしなくなってしまった。
代わりにボクはエッチな妄想をするようになった。思春期の突入だ。
まぁ健全な証拠だろう。
思春期を迎える頃にはボクは自分の中で物語や設定を作らなくなった。
誰かが作ったであろう世界観を楽しむ、現実世界で既存するルールの中で楽しむようになった。
さぁ、これで凝り固まった大人のできあがりだ。
お話を書くことは誰にでもできることだ。
そう、誰にでもできること。
それなのにボクは矛盾じみた考えを持っている。
お話を書くことができるのは特別な人。
頭の良い人ができることなんだ。
お話は書くものではなく読むものだ。
書くことなどボクには無縁のものだと思っていた。
そんな考えを長いこと持っているから、いざ書き始めると凝り固まった今までのボクが邪魔をしてくるのだ。
「つんつん!!」
「…な、何さ?」
「いひひ、なんでもない」
展開に悩んでいるとまたすぐにちょっかいを出してくる。
「つんつん!!」
「今度は何!?」
「何でこんなことに悩んでいるんだろって思ったでしょ?」
「…バレた?」
「お見通しだよ!!」
さらにボクはボクに追い打ちをかける。
「つんつん!!」
「まだ何かあるんですか?」
「自分で自分のことを恥ずかしく思っちゃってるんでしょ?」
「…常に思ってるよ!! (笑)」
大人になるにつれてボクは周りの目を気にするようになった。
良く言えば客観視するようになった。
「俺さぁ~、今小説書いてんだ」
これを友達に言うことができるかと問われたら、答えはNOだ。
何ら恥じらいもなく口にすることなどできない。
もし話す機会があるならば、ボクは「カミングアウト」という言葉を使うだろう。
口では個性が大事だと言っていても、なんだかんだ言ってマイノリティよりマジョリティの方がボクは安心するのだ。
「つんつん!!」
「つんつん!!」
こうしている今もボクがボクをつんつんする。
自分で自分に違和感を覚えながらお話を書く。
「いくらつんつんされたって書くんだから!!」
そんな強い意志を持って恥ずかしさと付き合っていきたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます