第30話 人ならざる者

 ボクらの世界では人間以外にも知能が高い動物はたくさんいる。

 チンパンジー、ブタ、イルカ、犬、ゾウ等、結構賢い動物が存在する。

 でも一番賢いのはやっぱり人間だ。

 人間は言葉を話したり、道具を使ったり、複雑な計算をしたり…いろんなことができるから。

 まぁボクも含めて愚かな人間はいっぱいいるけれど、それはちょっと置いておこう。


 しかし、空想の世界になると人間のように賢い生き物がたくさん登場する。

 エルフや獣人、姿は普通でも言葉を話す動物だって登場する。

 そしてファンタジー世界には無くてはならない存在であるモンスターだってそうだ。

 ある程度地位の高いモンスターは必ずといっていいほど知能が高い。

「ガルルルルル…」

 としかしゃべられないラスボスにボクは今まで出会ったことがない。

 戦う前にはちゃんと主人公と会話をしてくれるし、戦っている最中だって会話を止めようとしない。

 なんならダメージを食らった感想まで言ってくれるちょーがつくほどのお人好しだ。

 そう、お話の世界の生き物はみんな賢いのだ。

 そんな彼らを書いている時、ボクはいつものように立ち止まる。


 ボクの作品の中に天使と神様が登場するお話があるのだが、そんなお話の食事のシーンで

「食事を終え、2人は席を立った」

 とボクは表現をしたのだが、ここで手が止まった。

「あれ?2人って書いたけど、君ら人間じゃないよね?天使と神様だよね?」

「人じゃないのに…人って表現しちゃってる」

 どうすればいいのか分からず、

「食事を終え、○○と○○は席を立った」

 天使と神様の名前を書いてその場を切り抜けようとするが、

「えっ?でも3人だったら3人の名前書くの?あっ!!これも3人って考えちゃってる!!」

 負のスパイラルにではないが、訳のわからないことを永遠に考え出す。

 そして出た結論が

「食事を終え、席を立った」

 に至った。逃げました (笑)


 他にもある。

「お前は誰だ!?」

「何者だ!?」

 よくダンジョンの最後の方まで進んだ時に現れた敵に対して言うセリフ。

 しかし、この「誰」も「者」も辞書で検索すると対象としているのはやはり「人」なのだ。


「奴は我ら四天王の中でも最弱…」

 いつかは使ってみたい名ゼリフ。

 しかし、この「奴」だってやっぱり対象は「人」

 こんなことばかり考えていると、

「はぁ~…他にもっと悩むべきことはたくさんあるのに、俺は一体何を考えているんだ…」

 と自己嫌悪に陥る。


 最終的に至った結論は、本来「人」を対象にして使われる表現は、「人」のように知能の高い生き物に適用されるということにした。

 これ以上悩んでも仕方ないのだ。他にいい表現が浮かばない。


 これからもボクのお話では「人ならざる者」にどんどん活躍してもらうつもりだ。

 この件では悩まず、もう自分の中で違和感が無ければそのまま突っ走ろうと思う。

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