第19話 「全然」問題

「全然おいしい!!」

 テレビを見ているとよく耳にする言葉。

 昔、父がこの言葉を聞いたとき、よく嫌悪感をあらわにしていた。


 本来、「全然」の後には否定の言葉が続くことになっている。

「全然ダメ」だとか、「全然おいしくない」

 これが一般的。


 ただ、最近は先ほどの「全然おいしい」のように、

「全然」の後に肯定の言葉が使われるようになった。

 ボク自身も使ってしまう。

「全然いいよ~!!」

 もう使い慣れてしまった。


 言葉は常に変化する。

 仏教で言う、諸行無常。

 この世の万物は常に変化し、とどまることはないのだ。


 もし、言葉が不変のものだったら、僕は高校時代、あんなに古文に苦戦しなかっただろう。


 また、昔読んだ本に書いてあったのだが、僕らが今使っている丁寧語も、江戸時代の人からしてみれば全然丁寧じゃないそうだ。


 他にも、「ちょーカッコいい!!」の「ちょー」は今でこそ多用されているが、

 ボクが子供のときはそんなに使われていなかった。

 僕よりちょっと上の世代、多分「チョベリバ」とか「チョベリグ」を使われ始めたくらいに出てきたと思う。

 女子高生は言葉の最先端を走っていて、製造機でもあった。


 また、ネットの中でも言葉はよく生まれている。

 ボクが気に入ったのは「オコ」

 怒るという言葉を文字ったのが非常に面白い。

「オコ」「激おこ」「激おこぷんぷん丸」…

 その先があるようだが、知らない(笑)

 いつか使ってみたいなと思いながら、ブームは過ぎてしまった。


 どこかで一つの言葉が誕生し、どこかで一つの言葉が終わりを迎える。


 諸行無常。

 ボクは言葉も世の中の変化にもついて行けそうにない。


 だいぶ脱線してしまったが、話を「全然」に戻そう。

「全然」をどう扱うか?という点。


 ボクは今のところ、お話を書く際にこの「全然+肯定」を使用していない。

 無自覚で使ってしまう時もあるが、後で自分の文章を読み返した時に訂正するようにしている。


 ただ……セリフの時に使ってもいいんじゃないか?

 そう思い始めているボクがいる。

 セリフじゃない部分。地の文では使わないつもりだ。それはこれまで通り。

 でもセリフの部分は、現実感を出すために、違和感を出さないために使ってもいいんじゃないかなと。


 なぜそう思ったかというと、第3話でも書いたのだが、くだけた表現をボクは使っているからだ。

「これでいいんだ!!」

 本来、正しい日本語とするならば、

「これでいいのだ!!」

 という日本語になる。

 ただ、こういうくだけた表現を禁止にしてしまうと、ずいぶんカクカクしたセリフになってしまうし、みんなバカボンのパパになってしまう。

 だから僕はくだけた表現を気にしないで使っているし、その方がいいと思っている。


「全然」もこのくだけた表現と同じように使いたい。

 まぁ、別の言い回しで事足りるのだが、

「あぁ~、ここ「全然」使いてぇなぁ~」

 と思うことがあるのだ、ボクの中で。


 まぁ、こうやって記事にするってことは、これからバンバン使っていくつもりだ。

 ただ、使おうと思う反面、自分が「諸行無常」を都合よく解釈している気がしてならないのだ。

 リアリティを求めるのはいいが、正しい日本語も忘れずに勉強していきたいと思う。

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