第12話 悪役の勉強をするためにダークナイトを見ました
少し前にJOKERという映画が流行った。
母想いの善良な市民だったが、不幸が重なり、そして自分の信じて来たものに裏切られ、悪に落ちてしまうところが描かれていた。
それが人々の心を鷲掴みにした。
今作のJOKERも話題になったが、前作の「ダークナイト」もとても話題になった。
その時のJOKER役を演じたヒース・レジャー。
彼の演技は圧倒的だった。
ちょっと悪役を勉強しようと、そのダークナイトをレンタルして見てみた。
こちらのダークナイトは最新作のJOKERとはちょっと違う。
ダークナイトのJOKERは悪の中の悪。
圧倒的な悪のカリスマと呼ばれるもの。
悪に落ちるところは敢えて描かれていなかった。
個人的には必要ないのだと思う。
だって悪そのものだから。
JOKERにとって地位、名誉、お金、女性なんてものは何の魅力も感じない。
そんなものは要らない。
彼は純粋に今のゴッサムシティ(バットマンの世界の街)を破壊したい。
この世界を破壊することが生き甲斐であり、楽しみなのだ。
誰しもがJOKERのことを化け物だと言う。
でもJOKERはそれは違うと言う。
「誰しもが俺のようなJOKERなんだ」
「簡単に正義や良心は壊れるものだ」
そう言っていた。
現に映画に出て来たヒーローと呼ばれた地方検事の「ハービー」は、JOKERにそそのかされたハービーの知人によって、フィアンセが連れ去られ、罠にかけられ、結局死んでしまう。
ハービーはJOKERに怒り狂うが、JOKERはそれを手のひらで転がすように、ハービーをヒーローから悪に陥れてしまった。
そして、フィアンセを罠にはめた人間を殺してしまうのだ。
映画は終始、JOKERの独壇場だった。
主人公であるバットマンでさえもJOKERに振り回されていた。
まぁバットマンの映画だから最後はなんとかなるんだけれど。
ダークナイトは主張した。
「今のこの世界など、偽善の塊であって、所詮人間の根源は悪なんだ」
「自分の都合によってころころと変わってしまうそんな脆い正義なんだ」
そんなことを訴えかけてきた。
もうめちゃくちゃ魅入ってしまった。
正直、JOKERに憧れてしまっている自分すらいる。
もしボクは悪のカリスマに耳をささやかれたら簡単に悪に落ちるなと思った。
でも今のところ、ボクの周りは良い人ばかりなので悪に落ちる心配はなさそうだ(笑)
これからそんなJOKERのような悪役を作品に出せるかどうか考えてみたが、
「こりゃ無理だわ(笑)」
と即答した。
もしJOKERのような悪のカリスマがいたら、魔王と呼べる存在を意のままに操れるし、そして世界を救った勇者でさえも世界を滅ぼす魔王に変貌させることができてしまう気がする。
僕の腕じゃ、そのお話を完結させることなど絶対にできそうにない。
それにJOKERに問いかけられたことに対して、正義である勇者が何と言い返せばいいか分からない。
ちょっとだけ書いてみよう。
舞台は王道のファンタジーとする。
世界を滅ぼそうとした魔王と呼ばれる存在がいて、その魔王を倒すために1人の勇者が立ち上がる。
仲間と苦難を乗り越え、勇者は魔王を倒して、世界に平和がもたらされた。
そんな世界にJOKERが舞い降り、再び世界をかき回し始めた。
JOKERの好きにさせないよう勇者はJOKERを追い詰める場面。
勇者に追い詰められたJOKER。
しかし彼の表情には危機感を感じない。
JOKERは舌を出しながらあざけ笑うかのように話しかけてきた。
「勇者よ、お前は魔王を倒して世界を救った。だが見てみろ。今度は人間たちで争いを始めたぞ。俺がちょっと言いくるめればこのザマだ。お前は本当にこんな奴らを、自分たちの都合で平気で殺し合いをしてしまう奴らを救いたかったのか?」
「………」
勇者はJOKERに対し、何も言い返せない。
「こんなはずじゃなかった、お前はそう思っているんだろ?」
JOKERを追い詰めているはずなのに…追い詰めているはずなのに、勇者はいつの間にか苦悶に満ちた表情をしていた。
「さぁ、お前はどうする?お前はこの後どうしたいんだ?」
追い込まれていたのは…勇者だった。
「ハッハッハ!!口が裂けるほど笑おうぜ!!なぁ勇者!!」
しかし、勇者の表情は次第に無表情になっていた。
そして次の瞬間!!勇者は黙って、JOKERの胸に剣を突き刺した。
「————!!」
剣が突き刺さったJOKERの胸から血がドクドクと流れ出る。
しかしJOKERは笑った表情を止めようとしない。
JOKERは勇者の顔に近寄り、まっすぐに勇者の目を見つめる。
「そう、それでいい」
主人公はそのJOKERの笑みに恐怖し、剣から手を離して後ずさる。
「ン゛ア゛アアア―――!!」
JOKERは最後の力を振り絞って剣を抜いた。そしてその剣を勇者に向けた。
「勇者よ、今日からお前がJOKERだ。グァハ!!」
JOKERはそのまま倒れ込み、絶命した。
「………」
勇者はJOKERの死体に近づいて剣を拾う。
「ハハ…ハハハ」
しばらくすると、後方から王とその王の親衛隊が駆けつけた。
王が勇者に声をかける。
「おぉ、勇者よ。よくぞJOKERを倒してくれた。これでまた一つ、悪が取り除かれた」
「………」
「どうした、勇者。どうかしたのか?」
王は勇者の肩に手を置いた。
勇者は王の方へ振り返る。
「————!!」
王たちは驚いた。それは勇者が勇者とは思えないほど不敵な笑みを浮かべていたからだ。
そして何より、勇者のくちびるの周りは赤く染まっていたことに驚いた。
勇者は剣についたJOKERの血で、自分のくちびるの周りをJOKERのように塗りたくっていた。
「ハハ、ハハハ」
勇者が不気味に笑った次の瞬間!!勇者は王の首をはねてしまった。
「勇者様、何を!!」
王の親衛隊は剣を構える。しかし、勇者の前では彼らはただの赤子同然だった。
勇者はその場にいた王の親衛隊を皆殺しにした。
「ハハ、ハハハ」
勇者は馬にまたがり、王国の方へと向かって行った。
…というようにJOKERが…悪が勝ってしまう。
絶対にハッピーエンドにならない(笑)
お話書くのって本当に思い通りにならないと改めて実感した。
でも正直…これは書いていてかなり楽しかった(笑)
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