生徒会長選挙編13-20

百瀬さんの演説が終わり、その後も立候補者の演説がおこなわれた。 

非常に申し訳ないが、百瀬さんの後の演説は下手ではなかったが僕にも聞いている生徒にも消化試合としか思えなかった。

 

最後の演説が終わり全ての立候補者の演説が終了した。

 

「用紙を配りますので記入をお願いします。生徒会選挙の用紙の他にミスコンの紙も一緒に配るのでそちらも記入をお願いします」 


僕が書き方やルールなどを説明している間に先生方が紙を配る。 

立候補者と推薦人は選挙の投票をしてはいけないことになっているため、一ノ瀬さんや百瀬さんはミスコンの紙だけを受け取る。 


生徒会の人間が立候補している場合は不正防止のため、生徒会役員は投票できないので立候補者と同様にミスコンの用紙だけを先生から受け取る。 


ミスコンの用紙は学年別に一名ずつ名前を書くようになっており、自分の学年のところは必ず誰かの名前を記入しなければいけないが、他学年のところは無記入でも許されている。


神無と湊ちゃんはこのミスコンで勝負をしており、神無が負けた場合は僕と別れることになっているので、当然3年生の欄には神無の名前を真っ先に書く。 

そんなことが無くても神無に投票するが、それは照れくさいので誰にも言わない。


1年生の容姿だけでみれば湊ちゃんか百瀬さんだが湊ちゃんに入れれば票数の差は生まれない。百瀬さんには単純に入れたくないので一年生の欄は同じ寮に住んでいる宮森さん、2年生の欄には一ノ瀬さんの名前を記入して提出する。 


ミスコンの集計は続けているが、選挙の方は10分程で集計が終わり、すぐに結果が発表される。 

獲得票数の割合が全体の30%を越えている人が複数いる場合は決戦投票が行なわれる。 



結果が書かれた紙を先生から受け取り、中身を見ると一瞬目を疑ってしまった。


「では、生徒会長選挙の結果を発表いたします」 


票数180票 2年2組 一ノ瀬麗さん 


票数140票 1年2組 百瀬心 


「以上、2名が30%超えていたため決選投票を行ないます」 


僕がそれだけ言うと体育館中の生徒が騒めいた。 


生徒が360人なので、風邪などで休んでいる人間と現生徒会関係者、立候補者、推薦人などの投票の権利が無い生徒を除くとほとんどの人がこの二人に投票したことになる。 


「先ほどと同じ選挙用紙を配りますので、2名のどちらかに〇をつけ、ご投票ください。決選投票ですのでそれ以外の人の欄に〇をつけても無効票になります。集計の時間がかかりますのでミスコンの方を先に行ないます」 


 

「では、岡先生よろしくお願いします」 


生徒会長選挙は現生徒会長である僕が司会をおこなっていたが、ミスコンの司会は生徒会の人間も選ばれる可能性もあるので先生が行なうことになっている。  


「司会お疲れ~」 


「うん、ありがとう。決選投票は先生が続けて司会をやってくれるみたいだからこれで終わりだね」 


席に座ろうとすると横にいる会田さんから声を掛けられる。 


「何だかんだいっても一ノ瀬ちゃんの圧勝だと思ってたから決選投票になると思ってなかったかな。まあ司会の仕事も終わったんだし、一旦ミスコンの結果に集中しよ。優ちゃんにとっても重要なことだし」 


会田さんは賭けのことを知っているので、僕の心中が穏やかじゃないことを察してくれている。 


僕と選挙の立候補者、推薦人がクラスの所に戻ったのを確認し、岡先生が話始める。 


「では、少しイレギュラーな順番にはなってしまいましたが、これからミスコンを始めます」 


決選投票の結果はまだ出ていないがまるで選挙が終わったかのような盛り上がりを見せる。  


まあミスコンはただの人気投票のようなものなので無理もない。 


「まずは1年生から発表します。140票獲得で安西湊さんです」 



「おおーやっぱり安西ちゃんが取ったね」 


「うん、めちゃくちゃ目立ってたから仕方がないよ」 


運動部への道場破りや百瀬さんの推薦人。様々なところで目立っているのもあるが、一年生の中では一番かわいいのでミスコンを取るのは当然なのかもしれない。 


だが思ったよりも票数が少ない。まあ去年の一ノ瀬さんが中等部からの有名人だっただけで1年生でこれだけ入るのは凄いことだろう。 


「でも思ったよりは票数少ないね」 


「え、会田さんもそう思う?」 


「うん。多分、百瀬さんに相当流れたんじゃないのかな。選挙票に名前が書いているからミスコンの方にも書きやすいだろうし」 


「あーなるほど」 


これで神無の票がわずかに多いという状況になれば奇しくも百瀬さんに助けられたということになってしまう。 


「続いて2年生の発表に移ります。2年生は250票で一ノ瀬麗さんです」 


当たり前の様に一ノ瀬さんが取ったが、票数がすごいことになっている。同学年以外の人は白紙でも良いのにも関わらず圧倒的な得票数だった。 


生徒会選挙よりも票数が多いのが良いのか悪いのかは難しいところだが人気があり美人だと思われてることは間違いない。  


「続いて、3年生は230票で十川神無さんです」 


僕がほっと胸を撫でおろしていると、会田さんも安堵したような表情を見せてくれた。 


「良かったね」 


「うん、本当に良かった」 


「でもこの票数……」 


「票数?」 


「いや、なんでもないよ」 


たしかに、神無が去年取ったときよりも票数が多い。

だが、勝ったので些細なことはどうでも良い。

 


壇上に3人とも上がるが神無はいつも通りの無表情。一ノ瀬さんは選挙の結果が気になっており、湊ちゃんに至っては負けたのがあまりにも悔しかったのか涙目になっていた。 


「例年通りミスコンに選ばれた生徒には商品があります。名前と欲しいものを言ってください。欲しいものが決まらない場合は後からでもいいです。まずは安西さんからお願いします」


 

「1年の安西湊です。欲しいものは決めてなかったので後からにします」 


「はい、安西さんありがとうございます。続いて2年の一ノ瀬さんお願いします」 


涙ぐむ安西さんを見て少しだけ騒めいていたが、すぐに岡先生が次に行ってくれたので変な空気にならずに済んだ。 


「2年の一ノ瀬麗です。決選投票の結果はまだ出ていませんが、生徒会への活動資金に回します」 


自信の現れとも取れる宣言。だが百瀬さんが生徒会になったとしても一ノ瀬さんは生徒会の一員になるはずなので無駄にはならないということかもしれない。


「はい、ありがとうございます。最後に十川さんよろしくお願いします」


「3年の十川神無。私も生徒会に寄付」 


神無はそれだけ言って岡先生にマイクを返した。


「ありがとうございます。ではこれにてミスコンを終了します。ミスコン受賞者は席にお戻りください」 


三者三様、色々な理由がありやや盛り上がりには欠けたが僕としては神無が勝ったのでそれだけで大満足の結果となった。


「そして決選投票の結果が出ましたので私の方から発表したいと思います。決選投票の結果は……」 

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