生徒会長選挙返13-18
「下らない理由だと思うかもしれませんが、生徒から意見を貰いながら、生徒会役員と協力して良い学校にしていくのが楽しくて仕方がありませんでした。
今年度の生徒会のように、自分も楽しみながら、生徒全員楽しんでもらえる学校を作っていきたいと考えています。
そのため私が生徒会長になった暁には以下の2点を約束します。
1.現生徒会で評判の良かった物の継続
2.雑談ボックスの設置
現生徒会はリクエスト箱を設置し、生徒が学校生活を楽しめるように色々な事を実行してきました。
その中で、修学旅行の行き先や食堂のメニューを投票により決めるなどの明らかに評判の良かった物は継続していきます。
評価が良いかわからなかったものはアンケートを取り継続するかやめるかを決めていきます。
次に不安材料を取り除く事に注力したいと思います。いくら楽しいイベントがあっても不安なことがあると楽しむことはできなくなります。
そのため学習設備の強化と雑談ボックスの設置をします。
現在この学校の悩み相談のツールは生徒会が設置したアンケート箱とスクールカウンセリングの2つがあります。
しかし、アンケート箱はあくまでも学校の設備や制度に対しての悩みや意見をしてもらう物です。
スクールカウンセリングについてもプロが相談にのってくれるため非常に効果が期待できますが、相談をしに行くハードルが高く、スクールカウンセラーの教室に出入りする際に誰かに見られたりすると何かを相談したと友だちにばれる可能性があるなどの理由から、良い制度にも関わらず利用している人は限りなくゼロに近いです。
そのため、スクールカウンセリングよりも敷居が低い雑談ボックスを設置します。
この雑談ボックスは悩み相談からファンレターのような物までなんでもありにします。
そのため、ボックスに入れるところを誰かに見られても全く問題がなく気軽に悩み相談ができると思います。
手紙にカウンセラーや生徒会役員の名前など、答えてほしい人を明記していただければその人が責任をもって悩み相談の回答やファンレターの返事をします。
先ほど推薦人の花宮葵が言った通り私は天才ではありませんし生徒の悩み事を聞けるほど偉くもありません。
しかし、私には今まで培ってきた経験があります。
アルバイトが原則禁止のこの学園で私よりも社会に出て仕事をしている人はいません。
この堀江学園の最も良くない所はほとんどの生徒が初等部からこの学園にいるため外の世界を知らない人が多いということです。
そのため、大学進学で初めて共学を経験する人達や社会人になりいきなり男性と仕事をする人などは不安があると思います。
少しだけ早く社会に出た私の経験が、不安に思っている人の役に立つことがきっとあると思います。
それ以外にも勉強の悩みは学年1位の花宮葵が、恋愛の話はオブザーバーの二人が得意だと思うので幅広い相談事や雑談に返答できると思っています。
この公約が良いと思ってくれた方は是非清き一票をよろしくお願いします」
きれいな立ち振舞いで一礼をする一ノ瀬さんに対して、席に戻るまで拍手がなりやむことはなかった。
昨日内容を聞いたときは不安だったが自信満々に語る一ノ瀬さんを見て全く問題がないとわかった。
人気のある一ノ瀬さんがやるからこそ意味のある公約。僕が1、2年生だったら一ノ瀬さんや花宮さんに相談したいと思ってしまった。
以前の放送演説の時と違い、内容は事前に聞いていたものとだいたい同じだったので花宮さんも納得してくれているだろう。
「ありがとうございました。続いて百瀬心さんの推薦人の安西湊さんよろしくお願いします」
安西湊。僕の親友の安西聡の妹であり、入学して以降、瞬く間に全ての運動部に道場破りをして打ち勝ち、結局どこの部活にも属していない変わり者。
外部から入学し、いきなり1年生で生徒会長に立候補している百瀬さんと対をなす変人として2、3年生の中でも既に有名になっている。
見た目の可愛さも相まって、彼女が何を言うのか注目が集まる。
「1年2組の安西湊です。1年生ということもあり、百瀬心がどういう人物なのかわからないと思います。はっきり言って私もよくわかりません。
わかっているのは人の心を見透かしたり、誰に対しても物怖じせずに自分のしたいことを押し通す人間だと言うことです。入学式での不遜な発言や放送演説の堂々とした発言を聞いた皆様なら私の言ったことは理解していただけると思います」
悪口とも取れる発言に生徒だけでなく先生もざわめきだっていたが、立候補者席の百瀬さんは口元に笑みを浮かべていた。
「私には彼女が次に何をするかも何を考えているのかも全くわかりません。
ですが、私は彼女が生徒会長になって何をするのか、どんなことをやらかすのかを見てみたいと思いました。
きっと彼女ならこの学園を面白い方向に導いてくれると思っています。
今回生徒会長に当選したら、2年連続でやると公言していましたので、彼女がこの2年間で何をやるのかを見てみたい人はぜひ一票を入れてあげてください」
一礼して、ステージから降りると湊ちゃんは百瀬さんの方を向き、やりきったと言わんばかりにピースをしていたが百瀬さんは口元を隠して軽く笑うだけだった。
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