番外編 バレンタイン
今回の話は十川神無視点になります。
時系列でいうと10章と11章の間です。
やっとできた。今日はバレンタインの前日。いつもはほとんど料理をしないけど今日だけは別。一年に一回のイベントだし初めてできた彼氏にチョコを作るのは当然だろう。優喜んでくれるかな。
「十川さんがキッチンに立っているなんて珍しいですね」
「うん、余ってるから葵にもあげる」
「美味しそうなチョコですね」
自分でもかなりの自信作。かなり綺麗にできたし多分おいしいはず。
『なんだろう。白湯とゴムとコーヒーを混ぜたような味…カレーとチョコは誰が作ってもそこそこおいしくなるはずなのに』
「お、おいしいです」
あれ、声と心の声が全然違ったような。いや葵の感想が独特なだけかな。
「十川先輩、湯煎って知ってます?」
「やったよ」
「見せてもらってもいいですか」
「うん」
さっき作った時のように、ケトルでお湯を沸騰させて、ボウルに入れた板チョコにお湯を入れようとすると葵に止められた。
「十川先輩もういいです。何もかも間違ってます」
「逆になんでこの湯煎であんなに綺麗になるんですか!?」
「彫刻と油絵は得意だから」
「なんでそこだけプロ並みなんですか。味の方を追及してください!」
「ただいまっす」「ただいま」
皐月と優が帰って来た。皐月は部活だけどなんで優はこんなに遅かったんだろう。
「おかえりなさい」
「おかえり。優、1日早いけどあげる。皐月にも余ったからあげる」
「去年は作ってなかったけど今年は優さんに作ったんすね。ラブラブっすね~」
「ありがとう。神無から手作りのチョコもらえて嬉しい」
二人がチョコを食べたと同時に硬直した。
「ありがとう、神無。おいしいよ」
優は目を手で隠し、私に心の声を見られないようにしている。
「優、目隠さないで」
「今まで食べたチョコの中で一番不味いっすね!」
「五條先輩、オブラートに包んでください。せっかく伊澤さんが無理して美味しいっていってるんですから」
優の目を見るまでもなく、皐月と葵が答え合わせをしてくれた。
「神無作ってくれてありがとう。味よりも気持ちが嬉しいから。僕からも1日早いけどチョコあげる。五條さんと花宮さんにもあげるね」
「手作り?」
「うん、学校の調理室を使わせてもらって作った」
なるほど。だからいつもは一緒に帰っているのに今日は先に帰っててと言われたのか。
「美味しい…」
何か女子力で負けた気がする。いや、完全に負けた。
「十川さんのよりも美味しいっすね」「五條先輩比べたら失礼ですよ」
「優、来年は負けない…」
「いや、そういうイベントじゃないからね!?」
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