新入生編12-2

あれ、僕男だよね?顔とかじゃなくてそういうのでも男としてカウントされてないの?蕁麻疹が出なかったのは良かったけど男としてのプライドは深く傷つけられた気がする。


「宮森さんはなんで蕁麻疹がでるようになったの?」


「私、小学校の時から胸が結構大きくてよく男子にからかわれたりしてたんです。そのせいで男の人がどんどん苦手になっていって気づいたら蕁麻疹がでるようになってました」


もしかしたらその男の子は、宮森さんのことが好きでちょっかいを出していただけかもしれないが当事者からしたら嫌がらせと何らかわりない。こういうことはする側はすぐ忘れてしまうがやられた方は中々忘れられないものだ。トラウマになっても仕方がないのかもしれない。


だけど、宮森さんは身長が小さいから余計に大きく見える気がする。


同じような身長の五條さんや神無と比べても圧倒的に大きい。今まであまり気にしたことが無かったけど雪さんが抜けてから寮生全員ぺったん‥‥


「優、それ以上考えたら無事じゃすまない」


僕の考えていることを読み取った神無は純粋な怒りを浮かべて静かに呟く。


「ごめん」


意外と胸が小さいこと気にしてたんだ。小さいけど全く無いわけじゃないしそこまで気にしなくていいんじゃ。


「優、あとで説教」


「はい、すみません」


もう余計なことは考えないようにしよう。


「伊澤さんと十川さんは何を話しているんですか」


「あの二人は気にしなくていいよ。痴話喧嘩だから」


「痴話喧嘩‥‥もしかしてお付き合いしてるんですか?」


花宮さんが呆れながら説明すると、言いづらいことを聞くように神無と僕に答えを求める。


「うん、付き合ってる」

「痛たた」


僕の頬っぺたをつねりながらあっさり答えた神無に宮森さんはさらに驚く。

まあ、女の子同士で付き合っていることをあっさり言われたら驚くのも無理はないだろう。


「私のいた中学は共学で女の子同士付き合ってる人がいなかったのでびっくりしました。失礼ですけどそういうのは隠したりするものだと思ってました」


「隠すことでもない」


「かっこいい‥‥」


まあ、実際のところは普通に男女の付き合いだけど、男とばれる訳にもいかないし黙っておくしかない。


「先輩方はみなさん堂々としていてかっこいいです。私なんて顔も地味で人見知りですしこの寮にいても良いんでしょうか」


「人見知り?さっきは私にグイグイ来てたじゃない」


「あれは麗様に会ってテンションが上がってしまったからで」


「そっちの宮森さんのほうが良いと思うけどね」



「でも自信がなくて‥‥」

「じゃあ自信をつけましょうか。ちょっと待ってね」


一ノ瀬さんはそれだけ言うと外に出ていってしまった。


数分待っているとメイク道具をもってこちらに来た。


「先輩にはメイクを頼みます。私より上手いですし」


「一ノ瀬さんちょっと来て」


宮森さんに聞こえないように食堂から出て小声で話す。


「僕が化粧して、蕁麻疹出たらどうするの。全く触らず化粧するのなんて無理だよ」


「大丈夫ですよ。握手しても出なかったじゃないですか」


「伊澤先輩に反応しないと言うことは、多分男の人の汗や匂いに反応しているわけではないです。体質やアレルギーの様なものではなく、男が嫌いという拒否反応で出ているんだと思います。

だから男だと認識していない先輩には出ませんよ。」


「それに宮森さんの一番の問題は自信がないことです。自分に自信がないから男に何も言い返すことができない。だから恐がる。そして蕁麻疹がでる。そんな負のループに入ってたらいつまでも治りません」


「自信はたしかに重要かもね。でも、そうだとしたら簡単には治らないんじゃないかな」


「私は仕事、葵は勉強、十川さんは芸術方面全般。それぞれで結果を出しているから自信に繋がっていると思うんですよ。でもそれは一朝一夕じゃ身に付かない。だから手っ取り早く自信を付けるにはまずは身だしなみや化粧を変えて可愛いくなるのがいいと思うんですよ」


僕のことをモデルに誘った時と同じように何かのスイッチが入ってしまっている。この状態に入った一ノ瀬さんは誰にも止められない。


「可愛くなるのと自信がつくのって関係あるの?」


「めちゃめちゃありますよ。私に任せてください」


不敵な笑みを浮かべて僕の手を引き宮森さん達がいる食堂に戻る。


「ということでこれから宮森さん改造計画を始めます。宮森さん、行きましょうか」


「え?」


「もう結構遅い時間だけど今からどこかに行くの?」


「今日やらないと意味がないので仕方がないんですよ」


「私のSNSを見ているってことはおしゃれには興味があるってことよね」


「はい、でも似合わない格好して馬鹿にされるのも嫌で…私は麗様や伊澤先輩と違って背も高くないですし」


「それなら背の低い人に似合うおしゃれをすればいいの。とりあえずどこにいくかは車の中で教えるわ」


「先輩には私達が帰ってきた後に宮森さんに化粧してもらう仕事が残っているので寝ないでくださいね。明日の朝にいきなりやって上手くいかなかったでは困るので。化粧道具は置いていくのでどんな化粧をするか考えておいてください」


「寝させないから大丈夫。麗が戻ってくるまで説教してる」


「なら大丈夫ですね」


「それ絶対大丈夫じゃないよね‥‥」


一ノ瀬さんと宮森さんが戻って来るまで僕は無事でいられるのだろうか‥‥

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