球技大会編10-1

神無の両親にあってから数ヶ月経ちいつの間にか12月になっていた。


今日は久しぶりに寮生全員で夕食を食べながら来週行われる球技大会について話している。

雪さんがvtuberの仕事。僕、神無、花宮さんは生徒会、五條さんは部活と部活の助っ人で忙しいので、意外と全員が集合するのは珍しい。


「なんでこの時期に球技大会をやるんだろ?」


「寒い時期に運動することに意味があると言って、初代の理事長が決めたようね。まあ冬は運動することが減るし良いんじゃない?」


姉さんが普通に説明してくれた。忘れがちだけど先生だもんな。


「良いじゃないっすか。運動するの楽しいっすよ。」


「興味ない」

「僕もあんまり乗り気じゃない」


「え~、どうせだったら優勝目指して頑張りましょうよ」


僕と神無がやる気0の態度を取っていると五條さんが僕達を鼓舞してきた。


やっぱり運動部と帰宅部にはこういうイベントに温度差があるな。


「優勝って学年別で決めるの?」


「いいえ、各種目で全学年ごちゃ混ぜでトーナメントよ」


「それって流石に3年生には勝てないんじゃ?」


「2年と3年は毎回良い勝負よ。3年生は運動部でも引退してから何ヵ月もたっているし、結構衰えてるの。それに外部進学の受験組は参加しなくても良いから運動が得意な人が参加してない場合も結構あるわ」


「なるほど。それなら良い勝負になりそう」


「そうね。優達のクラスはバスケ部とバレー部のキャプテンがいるしかなり強いわ」


そういえば三年生が部活を引退して、バレー部は三木さんが、バスケ部は谷村さんが部長になったんだったな。


「雪さん、よく知ってますね」


「生徒会長だったし生徒のことはだいたいなんでも知ってるわ」


雪さんがどや顔で僕に言う。なんか最近は寮の中では素の雪さんが見れてちょっと嬉しい。



「優さんが本気出してくれれば優勝できそうだしちゃんと本気だしてくださいよ!」


五條さんには体育でバスケをやった時に手を抜いて怒られたから真面目にやったほうがいいかな。


「うん、ちゃんとやるよ」


「優、わかってるよね」

「うん、大丈夫」


本気でやり過ぎて男バレするなよと神無が僕に釘をさしてくる。熱くなると女装してること忘れるからそこは本当に気を付けないとな。


「なるほど、なるほど」

「えっどうしたの」


急に五條さんが腕を組ながらうなずいている。


「神無さんは優さんが全力を出すと色んな人からモテるから本気出すなって言いたいんすね。優さんも嫉妬深い彼女をもつと大変っすね」


五條さんが謎の勘違いをして神無と僕のことをからかってニヤニヤしている。


「「全然違う」」


「おお~流石、息ピッタリ」


「まあお互いの両親に挨拶行くくらいだから仲良しで当然ね」


「姉さん余計なこと言わなくて良いって」


「先輩方本当にラブラブですよね。喧嘩とかしないんですか?」


「いや、結構するよ。よく寮でもしてるでしょ」


「あれは喧嘩してるんじゃなくてイチャイチャしてると言うんですよ」


花宮さんだけじゃなく、姉さんと雪さんも呆れながらこちらを見ている。僕達って傍から見るとイチャイチャしてるように見えるのか。これからは気を付けないとな。


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次の日のLHRになり球技大会で出る種目を決めることになった。体育委員の谷村さんと五條さんが球技大会の種目やルールの説明をしてくれている。


説明を聞いた感じだと、バレー、フットサル、バスケ、卓球、バドミントンの中から少なくても2種目、人によっては3種目出る必要があるみたいだ。


バレーとバスケは部活経験者が多く毎年かなり盛り上がるらしい。逆にバドミントンと卓球はサブの体育館でやるためあまり人もこないし話題にならないみたいだ。


僕は卓球とバドミントンにしておこうかな。どちらも体育でやったことがあるくらいだし本気をだしても部活経験者には勝てないだろうから丁度良いだろう。


全員が参加したい所に名前を書き終わったので見てみるとバドミントン、卓球の所に票がかたまっていた


「これだとバスケ、バレー、フットサルの人数が足りないので、移動しても良いという人は移ってください」


「優ちゃんは強制的に移ってもらうからね」


「ええ、なんで!?」


谷村さんはなぜか僕にだけ笑顔でひどいことを言ってきた。


「動ける人がバスケとかバレーをやったほうが良いからね。みんな白熱するから運動できない人が入ると怪我する危険があるの」


「えっ球技大会ってそんな怖いイベントだっけ?」


「うん、球技大会ってそういうものだよ」


当たり前のように谷村さんが肯定した。


「だから私と一緒に頑張ろうね」


バドミントンの所に書いてあった僕の名前を消し、谷村さんの名前が書かれているバスケの所に勝手に追加された。

満面の笑みでこっちを見ているけどやっていることは全然可愛くない。


「まあそういうことだね。皐月もそう思うでしょ」


僕の席の後ろから三木さんが五條さんに何かの賛同を求めている。


「そうっすね!」


嫌な予感がして再度黒板を見ると、もう一人の体育委員の五條さんが卓球の所に書いてあったはずの僕の名前をバスケのほうに移動していた。

そしてなぜかフットサルの方にも名前が追加された。

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