球技大会編10-2
球技大会の出場種目が決まり、昼休みになっても暗い表情をしていると前の席の会田さんから突っ込みが入った。
「いつまでふてくされてるの?」
「だって卓球とバドミントンが良かった…」
「伊澤ちゃんってバスケ好きじゃなかった?」
たしかに球技の中では1番バスケットボールが好きだがそういう話ではないんだよな。
「いや、好きだけどそれ以上に目立ちたくないから卓球とバドミントンが良かったというか」
「目立たないってのは無理じゃないかな。最早伊澤ちゃんって全校生徒の中で1番有名でしょ。文化祭で有名人の一ノ瀬さんを振って神無ちゃんと付き合ったし、生徒会長の仕事ぶりもすごいしね」
「神無と付き合ってるのは事実だからいいけど生徒会長の仕事は普通にやっているだけなんだけど」
「あの前生徒会長の後釜を難なくこなしてるだけで充分目立つよ。それに、食堂のメニューとか昼間の音楽とか目に見えるところが変わってるからインパクトもあるしね。
修学旅行も投票で決めて北海道になったけどスキーをやりたいっていう意見が多かったから、今まで10月にやってた修学旅行を無理やり2月に変更したっていうのもすごいよ」
「うーん、役にたってるなら嬉しいけどやっぱり目立つのは嫌だな」
「じゃあなんで生徒会長をやろうとしたの?」
「それはちょっと理由があって」
まさか男バレしたのが原因で雪さんにやれって言われたなんて言えるわけがない。
「気になるけど答えたくないみたいだし聞かないね。でも今回の球技大会は絶対に目立つと思うよ。運動神経抜群なのは噂にはなっているけどクラスの人以外は見たことないし相当注目されてるでしょ」
「だよね…」
「しかもうちのクラスにはあの二人がいるからね」
会田さんが向いている方向を見ると五條さんと三木さんが楽しそうに弁当を食べながら話していた。
「あーバレー部コンビ」
「そそ。あの二人はスポーツだけだったら伊澤ちゃんより目立ってるからね。私達のクラスのバレーは絶対に全校生徒に注目されるよ」
「あーそれはもうどうしようもないかも」
「あとバスケもバスケ部のキャプテンの谷村さんがいるしね。伊澤ちゃんのでる競技であんまり盛り上がらないのはフットサルくらいじゃないかな」
「そっか。フットサルだけでも目立たないのは助かるかも」
まあ、他の人は2種目しかでないのに3種目でないといけなくなっているからフットサルが目立たなくてもプラスにはなってないんだよな。
「まあ、とりあえず頑張ろうよ」
「うん、もう諦めて頑張るよ」
放課後になり、今日から球技大会の練習をすることになった。
今日はバスケの練習だ。部活が休みの日にやるからバスケとバレーを交互に練習することになっている。どうせだったら連続でやったほうが感覚を掴みやすいんだけどこればっかりは仕方がない。
「あれ?今日は僕と谷村さんだけ?」
「伊織」
忘れてた。そういえば告白のときに名前で呼んでって言われてたな。
「今日は伊織だけ?」
「うん、バレー部とバド部の人は今日部活だからこれないの。だから二人っきりだね」
「なんか嬉しそうだね」
「うん、久しぶりだからね。本当はバスケの練習じゃなくてデートしたかったけど」
「デートはちょっと…」
「あー神無ちゃんがいるもんね。流石に神無ちゃんには勝てないから今は諦めるよ。でも別れたら全力で狙うから覚悟してね」
「どう反応していいかわからないんだけど」
「今はそれで良いよ。それじゃあ練習しようか」
伊織は指先で器用にボールを回しながらニコッと微笑んだ。
その後はドリブルやシュートフォームなどを手取り足取り教えてもらった。バスケは結構自信があったけど、やっぱり基礎から教えて貰うと全然違うな。今日だけでもかなり上手くなった気がする。
なんか教えて貰ったときにやけにボディタッチが多かった気がするけど気のせいかな。
次の日になり今度はバレーの練習の日になった。
「優さん、しっかり」
「ごめん、もう一回」
「そっち行ったよ」
「はい」
練習が一旦休憩になり、三木さんと五條さんがこっちにきた。
「優さん、本気でやってます?」
「え?やってるんだけど…」
今回は体育のバスケの時と違い、ウィッグが取れないギリギリくらいまで本気を出していたはずだ。
これは単に僕がバレーが下手っていうことだろう。
「あ、ごめんなさいっす。バレーはバスケほど得意じゃないんすね」
「うん、体育以外で全くやったことないからね。ごめん期待はずれだった?」
「い、いやそんなことないっすよ」
「あんた、顔に出過ぎ。バレー部以外でこれだけできればむしろかなり上手いでしょ」
「いや、バスケがあれだけ上手いからバレーもめちゃめちゃ上手いのかなって」
「バスケは昔友達と死ぬほどやってたから」
「あーなるほど。だから経験者じゃないのに上手かったんすね」
「うん。でもあと一週間あるしバレーも頑張るよ」
「はい!じゃあガンガン練習しましょう」
「お手柔らかに頼むよ」
果てしなく余計なことを言ってしまった気がする。
でもまあいいか。いくら上手くなってもこの二人以上に目立つなんてことはあり得ないだろうし。
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