文化祭編8(プロローグ)

神無の両親への挨拶が終わって寮に帰宅した僕は部屋に着くなり爆睡してしまい気づいたら朝になっていた。それだけ体力的にも精神的にも疲れていたのかな。


まあそのおかげでぐっすり寝ることができたのか、今日の授業はかなり集中することができたし良かった気がする。挨拶の方も、神音さんには嘘だとバレてしまったが神無の父さんとお爺さんにはバレずにすんだし上手くいったと言ってもいいだろう。


生徒会長選挙から今日までずっとバタバタしていた気がするけどやっと落ち着いたような気がする。まあ7月の下旬に文化祭があるから生徒会はその準備でかなり忙しくなるんだけどね。


授業が終わり、神無と二人で生徒会室に向かうとすでに一年生コンビと雪さんと神崎さんがいた。今日は前生徒会の二人に文化祭の準備について教えてもらうことになっているので来てもらっている。


「久しぶりね」


「はい、お久しぶりです。今日はよろしくお願いします」


「うん、今の生徒会のメンバーは文化祭のことはほとんどわからないと思うから頑張って手伝うわ」


「たしかに去年の文化祭を知っているのは十川さんだけよね。伊澤さんは2年だけど転校生だし」


「神無はどんな感じだったか覚えてる?」


「うん、雪が歌ってた」


「この学校の伝統で生徒会は何か出し物をやらないといけないのよ。去年は生徒会のメンバーでバンドをやったの。雪がボーカルをやったのだけどかなり評判が良かったわ」


苦笑いをしている雪さんの横にいる神崎さんが説明をしてくれた。


たしかに雪さんがやっているvtuberの歌枠を見たことがあるけどかなり上手かった。


「今年の文化祭の準備はそこから決めても良いかもね。やる内容は体育館でできることなら何でも良いわよ。去年はバンドだったけどその前は劇でミュージカルをやった世代もあったみたいだし」


「歌、苦手」

「実は私も」

「ごめん、僕も」


神無と花宮さんと僕が一斉に歌が苦手と言ったのでバンドやミュージカルはすぐに候補から消えた。


「じゃあやっぱり劇ですかね。でも4人でできる劇なんてありましたっけ?」


「三匹の小豚、北風と太陽、赤ずきんちゃんとかかしら」


「どれもピンとこないというか女子校でやっても盛り上がらないですよね」


花宮さんと神崎さんがそれはないなと言いたげに首を横に振っている。


「全員こんなに可愛いのに三匹の小豚とかやったらシュール過ぎて逆に面白そうだけどね」


「私がオリジナルの劇を作ってあげようか?」


「え、良いんですか?でも雪さんは忙しいんじゃ?」


「今の時期はたいして忙しくないわ。私、そういうの好きなの」


たしかによく配信で寸劇みたいなものをやっていた気がする。


「じゃあ、頼んでも良いですか?」


「ええ、任せて。花宮さん、ちょっと耳かしてもらっても良いかしら?」


花宮さんと雪さんが小声で何かを話している。


「ちょっと面白そうですね。私はそれで良いですよ」


「そう、じゃあそれで書くわね。3日も貰えれば書けるから、それまで待っててね」


普段学校では完璧な所しか見せないから、僕は雪さんが隠れポンコツだということを忘れてしまっていた。

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