十川家(十川神音視点)

今回の話は十川神音視点での7章の総集編となります。


今日は神無の彼氏が挨拶に来る日だけど、どうしてこうなったの?


ただでさえ神無は寮暮らしであまり家には帰って来ないのに、GWは私が海外で個展をしていて神無に会えなかったからどうなっているか良くわからない。


一応家に帰ってから男二人の考えは読み取れたけど、どうやら神無にお見合いを勧めたら彼氏がいると言われたので彼氏を連れて来いという流れになったらしい。


あれ?神無なら無理やりお見合いを勧めている訳ではないことはわかっているだろう。

わざわざ彼氏がいるってことを言う必要はなかったはずだ。


だからこそ楽しみだったし、面白そうとは思ってたけど見た瞬間わかった。


思っていたよりさらに面白いと。


この子堀江学園に通ってるのね。

男の子なのに。

まあ悪い人じゃないみたいだし、そんなに問題ないかな。


神無とは久し振りにあったけど神無の方もかなり面白いことになってるなー。

先輩の仕事のお手伝いをしていたり、生徒会にも入ったんだ。


面倒くさいことはだいたいやらないのに珍しい。


とりあえず、ちょっとからかって見ようかな。


「ウィッグの毛ついてるわよ?」


予想通り優はかなり驚いている。


優が焦っている横で神無が私のことをじっと見つめてきた。


『優がびっくりするからやめて』


『ちょっと遊んだだけじゃない。神無は考えていることがわかることを彼氏に言ってないの?』


『いじわる』


まあ、私には彼氏じゃないってバレているのはわかるよね。しかも優に考えがわかるってことを言ってないということも。


『まあ、いずれバレるだろうし、言ったほうがいいんじゃない?恋人ではないけど仲の良い友達みたいだし』


『うん。じゃあ私のことも言うけどお母さんが考えてることを読めることも言うよ』


『もちろん、言っていいわ』


「神無、僕の秘密をお母さんに言ってたの?」


「言ってない」


「じゃあなんで僕がウィッグをしてたことを知ってるの?」


お、これは良いパスが来たんじゃない?言うなら今しかない気がする。


『言うなら今じゃない?』


『うん、言う』


「そういう人だから」


『・・・神無、それで説明できたつもりなの?』


『完璧』


『優も神無の説明は良くわからないって心の中で言ってるわよ』


『優が悪い』


『可哀想だから私が説明してあげてもいい?』


『・・・お願い』


結局、私が全部説明したけど優は別の意味で困惑してしまった。


まあ、無理もないよね。いきなり女装で女子校に通っていることや偽彼氏のこともバレたって、もう何をしに来たかわからない状態だと思う。


可哀想だからそろそろ家に入れてあげようかな。


実際に彼氏ではなかったけど、悪い人ではないし、神無も気に入ってるみたいだから二人に紹介しておいて損はないと思う。


あれ?なんか智和さんの雰囲気がいつもと違う。娘の彼氏と話す父親を意識してる感じかな?


「たまたま、外でぶつかってそこから色々話して仲良くなりました」


ぶっ、何その嘘エピソード。神無は塾とかも行ってないから出会う場所がないっていうのはわかるけど。


でも優、その嘘話は逆効果だよ。智和さんがさっきまでは演技で怒っていたのに本気で怒り始めている。

そろそろ私が仲裁してあげないとまずいかもしれない。


なんとか柔道で勝負するってことにしたけどお父さんは大丈夫かな?

心の底から優のことを舐めているけど結構強いみたいよ。

神無と私の目の前で負けたら心が折れちゃうんじゃないかしら。


案の定、始まって数秒で優の方から仕掛けて、かなり危なかったけど投げ飛ばされはしなかった。

久し振りにこの人が試合をしているのを見たけどやっぱり強かったんだね。


試合は智和さんが技ありを1つとったから勝ちだけど事前に勝負のルールをお父さんは一本、優は技ありを1つ以上とれば勝ちにしていたから実質引き分けだね。


勝負してからは男として認めたのか、かなり友好的になった。


そのあとお父さんとも将棋をして認められたようで少し安心した。


せっかくこの二人に認められたのに偽彼氏っていうのが少し残念だけどね。


『もう、本気で優君のこと狙ったら?』


『うるさい』


神無はすぐに私から顔を反らした。

目を見ないと完全には相手のことを読めないからね。流石、同じ力を持っているだけあり、ごまかしかたも上手い。


私たちは相手の目を見ないと今考えていることや過去のことを読むことができないから目を隠すのはかなり有効だ。目線が合っていなくてもこちらに見えていればわかるので目線を反らすくらいでは意味がない。智和さんは読まれたくないときは別の方を見るけど実は全部筒抜けなんだよね。


それから少し経ち寮に帰る時間になっていた。


「うん、家族のは読み取るのが難しい」


神無が優に説明をしているけどそんな事はないよね?だって神無と私は普通に口に出さなくても会話ができているし。神無はなんで嘘をついたんだろう。

そうか、智和さんが無理にお見合いをさせようとしているわけではないことを前から見抜いてたってことを優にはバレたくなかったのか。


本当に神無は可愛いわね。帰る前にちょっとからかっておこうかな。


「今日は楽しかったわ。神無も意外とそういうところがあるのね」

『理由を付けて、優を私たちに紹介したかっただけだったんでしょ。可愛い所あるわね』


「お母さん、余計なこと言わなくていい。優、行こ」


『正式に付き合ったら、また連れてきなさい。』


『・・・そうする』


絶対目をそらすと思ってたけどちゃんと答えてくれた。


『そんなに気に入っているならさっさと伝えないと他の女の子にとられちゃうわよ』


『うるさい』


今度は目を反らして急いで外に出て行ってしまったけど顔が真っ赤だったし流石に優君でも気づくんじゃないかな?

まあ、それで神無の気持ちに気づいて付き合うきっかけになってくれたらうれしいかな。



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