生徒会長編5-2
生徒会長は服を脱いでいる途中で、上だけ下着姿だった。
イメージ通りの黒いシンプルなブラだったが今はそんなことはどうでもいい。
いや、僕が裸であるという今の状況に比べれば、他のことなど全てどうでもいいのだ。
「ああ、あなたもいたの。お風呂に入るの随分遅いわね。まさか私の配信…」
彼女は話しながら僕の姿を見て絶句した。
「生徒会長。これは、その…」
なんと言い訳をすればいいかわからず言葉が出ない。
いや、最早状況がゲームオーバー過ぎて、話す言葉が無いのだ。
これで退学決定で警察に突き出されるのか。呆気ない人生だったな。
走馬灯の様に思い出を振り返っていると、僕から目をそらして小さく笑みを浮かべる。
「これは、ラッキーだね」
「ラッキー?」
ラッキーって何のことだろう。
しかもいつもと口調とか雰囲気が違うような。
「いや、こっちの話よ。予定通り23時半に私の部屋に来なさい」
「え?警察に突き出さないんですか?」
「その辺りも部屋で話し合いましょう。とりあえず風呂入るからあなたは出ていって」
いつもと同じ雰囲気に戻り、部屋から出ていく様に言われたので急いで服を着て更衣室からでる。
この期に及んで何を話すと言うのだろう。
まあ、もうどうあがいても終わりだしもう生徒会長に任せることにしよう。
23時半になり、彼女の部屋の扉をノックする。
中から生徒会長が出て来て、入っていいわよと言われたので部屋に入りドアを閉めた。
間取りは当然ながら僕の部屋と同じだが普通の部屋にはない、電話ボックスよりも大きい、謎の黒い箱があった。
「ああ、これ防音室なの。もう私がやってることは知ってるよね?」
なるほど、寮の部屋はそこそこ防音性はいいはずだけど歌ったり叫んだりすると流石に聞こえるし、こういう設備は必要なのか。
僕は言い訳をしてもしょうがないので、正直に話す。
「はい、さっきの配信見てました」
「だよね。校舎裏であった時はいつもと違う声で話していたから気になって調べるのも仕方がないね」
「はい、すみません」
「でも、こっちが素の声と話し方なんだけどね」
たしかに今の声と口調はいつもの威圧感のある話し方ではない。
「え、普段の方が演技なんですか」
「うん」
「な、なんで普段はあんな感じなんですか?」
「格好付け?」
驚くくらいどうでもいい理由だった。
僕が呆れて生徒会長の方をみていると彼女は慌てて訂正する。
「いやいや、そこだけ聞くと変だけど、ちゃんとした理由なの。私の顔って結構目付きがきつかったりするけど、声がこんなんじゃない?だから中学の時とか男子に結構バカにされててね。だから高校デビュー的な感じで違う声と口調で話すことにしたの」
「なるほど」
たしかに目付きはややきついが美人で可愛いらしい声っていうのはかなりのギャップで良いような気がするけど。
その男子は生徒会長に気があったから、ちょっかいをかけていただけなんじゃないかな。
「外部受験で高校からこの学校に入ったからタイミング的にも良かったしね。まあ、私って凝り性だから本気でキャラ作りしちゃって、戻れなくなっちゃったんだけど」
やっぱりこの人アホなんじゃないか。
いや、あそこまでキャラ作りできるのはすごいけど残念美人だな。
「そういえば、vtuberはいつもの声でやらないんですか?」
「いつも声を作ってるから素の声でも話したくなって、この活動を始めたからね。いつもの声でやったらやる意味なくなっちゃうの。たまたま事務所のオーディションにもこの声で受かったしね」
生徒会長はたまたまといったがおそらく実力だと思う。
たしかに生徒会長のルックスとこの可愛いらしい声はあまり合っているとは言えないかもしれないが、2次元の可愛いキャラとはすごく合っているし、事務所が求めている声だったのだろう。それに話しも上手で堂々としているから一人しゃべりも上手そうだし。
「まあ、そんな事よりも」
ニコニコしながら彼女はこちらを見る。いつもの生徒会長からは見たことの無い表情だ。
「本題を話しましょう」
「はい、僕のことですよね」
本来の本題は生徒会長の話のはずだったのに、僕の男バレが大問題すぎてこっちがメインの話になっていた。
「まず一応確認だけど男の子なんだよね」
「はいその通りです」
「なんでこの学校に通うことになったの?」
そのあと、生徒会長には全てを話した。
「なるほどね。で、これからどうするの?」
「どうするって、生徒会長の判断に従いますよ。退学はもちろんしますが、生徒会長が通報するっていうなら警察にもお世話になります」
「ふーん、指示に従ってくれるの。じゃあ、来月の生徒会長選挙に立候補しなさい」
生徒会長は意味不明なことを言い出した。
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