21 練

『水桜国』のどこか。




「おい、ばばあ。土産はどうした?」

「………おばあさま。今回はお土産はないのですね。残念ですが、おばあさまが元気に戻られて私は安心しました。と。言い直しても構わないですよ」

「はいはい。人としての礼儀なんちゃらかんちゃらですよねー。けど、俺。もう人間じゃねえし」

「私が人だと言ったらあなたが雑草だろうが人なのですよ、ななし」

「けっ。ほんと、厄介なばばあに拾われちまったよ」

「私の土地に倒れ込んだあなたが悪いのですよ」

「あーあ。ほんと最悪」

「最悪なあなたに一つ、いいことを教えてあげますよ」

「いいこと?」

「玖麦」

「は?」

「辛い時にはこの名前を口にしなさい。緩和しますよ」

「はあ?意味わかんねえ」

「あなたはお莫迦さんで忘れっぽいですからね。これから毎日一回は唱えなさい」

「あ。おい。ばばあ。ったく。意味不明さに拍車がかかってんな。誰だよ、玖麦って。もしかして、ばばあの血筋のもんか。うげえ。誰が言うかっての」










(2021.8.5)


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