ちに繕う野花 十三
時を遡らせてやり直させる力はもう、今回限りで費える。
ゆえに、
もしも、
これまで同様に。
『殺すなんてとんでもない。トキ様も三人全員気に入っていますからね。ただだからこそ、連れ去りそうだなあと思いまして』
『連れ去る?俺が?』
『はい。私たちの世界ではない、あなたの世界に』
助けられないならばいっそ、と、先んじて動けば。あるいは。などと。
連れ去れる場所などもう、ないというのに。
自ら定めた
氷月を助けられるかどうかの岐路を通り過ぎた時点できっと、己は、
何故、と、己に問いかける。
何故、この地に降り立ったのか。何故、紅凪と仙弥に手を差し伸ばしたのか。
何故、氷月を助けようとしているのか。
氷月が『雪芒』だから助けようとしているのか。では、氷月が『雪芒』でなければ助けようとしなかったのか。
是、と、答える。答えられる。今ならば、
氷月には『雪芒』として、やってもらいたい事があるのだ。
紅凪から貰った白扇に映し出してほしいのだ。
いくら時を巻き戻しても見る事が叶わない風景を。
「ヘルメット。ゴージット。ポールドロン。ガルドブラ。コーター。ヴァンブレイス。リアブリス。ゴーントリット。ベサギュー。クウィラス。フォールド。タセット。キューリット。チェインメイルスカート。クウィス。パウレイン。グリーヴ。ソルレット」
己の依り代となるフルプレートアーマーの部品を確認していったカイは、ヘルメットの額部分から唯一の己の身体である前髪が生えている事を最後に確認してのち、壊れゆく世界に背を向けて歩き出した。
「さあってと。じゃあ、己の役目を果たしに行きましょうかねえ」
相棒の所為で死にゆくとわかっていても、
いや、相棒の所為だからこそ余計に、か。
相棒のように規則を破らず、規則を順守しよう。
相棒の望みを、打ち破りに行こう。
(2024.10.25)
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