第22話 町を歩いて
私はリンドラ様に連れられて、町の中を歩いていた。
「ちゅ、注目されていますね……」
「ええ、皆、サフィナ様に興味を抱いていましたからね」
町の中まで来てから、住人達の視線が私に集まっていた。
領主の婚約者である私のことが、気になるのは当然のことである。そのため、この視線は仕方ないことだ。
しかし、それでも恥ずかしいことは変わらない。このように注目されるのは、結構緊張するものだ。
「別に、緊張する必要はありませんよ……といっても、それは難しいですか」
「はい。やっぱり、緊張してしまいます」
そんな私の緊張を、リンドラ様はわかってくれた。
とりあえず、リンドラ様がわかってくれているなら、少しだけ安心できる。
「リンドラ様、お久し振りです……」
「カルニ、久し振りだな。病気は、よくなったのか?」
「はい。おかげさまで、よくなりました」
そこで、老齢の女性がリンドラ様に話しかけてきた。
その言葉に、リンドラ様は足を止めた。
話の内容から、カルニさんという女性は病気だったのだろう。それが治って、久し振りにリンドラ様と会ったという流れだろうか。
「そうか。取り寄せた薬が効いたのだな」
「はい、本当にありがとうございました……」
「構わん。領主として当然のことをしたまでだ」
どうやら、リンドラ様が取り寄せた薬で病気が治ったようだ。
そのお礼のために、カルニさんはリンドラ様に話しかけてきたのだろう。
「……そちらが、リンドラ様の婚約者様ですか?」
「ああ、私の婚約者のサフィナだ」
「サフィナ様……私は、カルニと申します」
「あ、サフィナです」
お礼を終えたカルニさんは、私の方に視線を向けてきた。
やはり、私のことが気になっていたのだろうか。いや、この状況で私に触れないという方がおかしいので、空気を読んだだけかもしれない。
「……」
「カルニさん? どうかしましたか?」
カルニさんは、私の顔をじっと見ていた。
もしかして、私の顔に何かついているのだろうか。そうだとしたら、とても恥ずかしい。
「申し訳ありません。少々、驚いてしまいまして……」
「驚く?」
「その……サフィナ様が、あまりにもお母様と瓜二つだったので……」
「あ、そういうことですか……」
カルニさんの言葉に、私は理解した。
どうやら、カルニさんは私とお母様が似ているから驚いていたようである。
考えてみれば、周辺の住民も私の両親のことを知っているのだ。それなら、驚くのは当然のことだろう。
なぜなら、私とお母様は本当にそっくりだからだ。そんな私が目の前に現れたら、かなり動揺するだろう。
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