第20話 頼って甘えて

「ありがとうございます。リンドラ様は、私のことを大切に思ってくれているのですね……」

「当り前です」


 私は、リンドラ様の胸の中でお礼を言う。すると、リンドラ様は短く力強く返してくれる。

 その言葉が、また嬉しいものだった。もしかして、リンドラ様は私を嬉しくさせる天才なのだろうか。


「……前々から、サフィナ様は少々危うい人だと思っていました」

「え?」

「あなたは、コルニサス家の復興のために尽くせる程に、誇り高く責任感が強い。その意思の強さは、時に無理をするのではないかと思うようなものでした」


 そこで、リンドラ様がそのようなことを言ってきた。

 まさか、そのようなことを思っていたとは驚きだ。

 だが、考えてみれば確かにそうかもしれない。私は、コルニサス家のために尽力すると決めている。それは、時には危うさにも繋がり兼ねないだろう。


「確かにそうかもしれませんね……」

「ええ……サフィナ様、何かあったら、私を頼ってください。あなた一人で背負えるなど、思ってはいけませんよ」

「はい……」


 私に対して、リンドラ様はとても優しい声でそう言ってきた。

 恐らく、ずっとそのような心配をしてくれていたのだろう。

 その言葉を聞けて、本当によかった。これからは、遠慮なくリンドラ様を頼ろう。私は、そう思うのだった。


「さて、それではそろそろ……えっ?」


 リンドラ様は、そこで体を離そうとしてきた。

 しかし、私はそれを引き止めていた。そのことに、リンドラ様は少し驚いている。


「サフィナ様? どうかしましたか?」

「リンドラ様、もう少しこのままでいさせてもらえませんか?」

「え?」


 私は、リンドラ様から離れたくなかった。

 先程の言葉を聞いて、そのようにしようと思ったのだ。


「頼ってもいい……それなら、もう少し甘えさせてもらいたいのです」

「甘えさせて……ですか?」

「はい……」


 私は、リンドラ様に甘えていたかった。

 その優しい温もりに、もう少し包まれていたかったのである。


「そういうことなら、大歓迎です。存分に甘えてください」

「そうさせてもらいます……」


 私のお願いを、リンドラ様は受け入れてくれた。

 再び、リンドラ様がしっかりと抱きしめてくれる。私は、ゆっくりと体を預けていく。

 このように、誰かに甘えるなどいつ以来だろうか。


「……サフィナ」

「リンドラ……」


 リンドラ様の呟きに、私はゆっくりと応えた。

 こうして、私はしばらくリンドラ様に甘えるのだった。

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