第13話 本当の婚約

「すみません、急にこんなことを言ってしまって……」

「い、いえ……」


 私は、とりあえずリンドラ様に謝罪した。

 謝罪でいいのかわからないが、それしか思いつかなかったのだ。


「嫌ですよね。婚約者とはいえ、初恋の人に嫉妬なんて……」

「そんなことはありませんよ。むしろ、嬉しいくらいです」

「え?」


 そんな私に対して、リンドラ様はそのようなことを言ってくる。

 その言葉の意味が、私にはわからない。嬉しいとは、どういうことだろうか。


「といよりも、謝罪しなければならないのは、きっと私の方です」

「リンドラ様が?」

「はい。あなたに、そのようなことを言わせてしまったのは、私の責任ですから……」

「そ、そんな……え?」


 そこで、リンドラ様は私の方に歩み寄ってきた。

 その行動に、私は少し困惑する。

 一体、リンドラ様はどうしたというのだろうか。


「サフィナ様、私はあなたを愛しています」

「え?」


 そんなことを思っている私の前で、リンドラ様は跪いて、そう言ってきた。

 その言葉と行動に、私は大いに動揺してしまう。

 まさか、リンドラ様からそのようなことを言ってくるとは驚きだ。


「確かに、最初はあなたのことをあの人と重ね合わせていました。だけど、今は違います」

「今は、違う?」

「私も、あなたと同じく、あなたに惹かれているのです」


 驚く私に、リンドラ様はさらにそう言ってきた。

 どうやら、リンドラ様は私に惹かれているらしい。


「あなたの真面目でひたむきな姿勢や、コルニサス家のために努力する姿勢、それらを私はずっと見てきました。その姿勢に、私は惹かれていったのです」

「そ、そうだったのですか……」


 リンドラ様の言葉に、私は少し嬉しくなる。

 まさか、そのような所を見ていてくれたとは思っていなかった。

 そんなことまで見ていてくれるリンドラ様に、私は益々惹かれていきそうだ。


「サフィナ様、私と本当の夫婦になってもらえますか?」

「本当の夫婦ですか?」

「はい。私達は婚約者ですが、今ここでもう一度誓わせてください。あなたとの愛を……」

「……わかりました。誓わせてもらいます」


 リンドラ様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。

 貴族社会において、お互いに惹かれて結婚などそんなにないことだ。そのため、私達はかなり幸福な部類であるといえるだろう。


「リンドラ様は、意外にロマンチストなのですね?」

「そ、そうでしょうか?」

「そうだと思います」


 私達の唇が、ゆっくりと重なる。

 こうして、私とリンドラ様は結ばれるのだった。

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