第12話 嫉妬の気持ち

「……リンドラ様が、私を婚約者にしたことに、それは関係あるのですか?」

「え?」

「私が母と似ているから、私を婚約者にしたのですか?」

「なっ……」


 そこで、私は一番重要な部分を聞いてみた。

 リンドラ様が私を婚約者にしたのが、私を母が似ているからなのだろうか。それが、私の一番知りたいことなのである。


「そのようなことはありません」

「本当ですか? その気持ちが、一つもないと言えますか?」

「それは……」


 私が質問を重ねると、リンドラ様は少し表情を変えた。

 少し動揺しているようだ。私の言葉が、図星だったからだろうか。


「……その気持ちが、一つもなかったといえば、嘘になるでしょう」


 リンドラ様は、ゆっくりとそう呟いた。

 やはり、その気持ちがない訳ではなかったようだ。

 だが、恐らくそれだけではないのだろう。それは、今までリンドラ様と接してきてわかっていることだ。


「すみません、あなたにとっては不快なことですね」

「大丈夫です。それに、謝るのは私の方です。嫌な質問をして、すみませんでした」

「い、いえ……」


 そこで、私はリンドラ様に謝罪する。

 私は先程、とても嫌な質問をリンドラ様にしてしまった。きっと、リンドラ様は不快な思いをしただろう。そのことについては、非常に申し訳ないと思っている。

 だが、それでも確かめたかったのだ。リンドラ様の気持ちと自分の気持ちを。


「今の言葉で、私も少し理解できました」

「理解? 一体何を?」

「私は、リンドラ様に心惹かれているのだと……」

「え?」


 今のリンドラ様の言葉で、私はそのことを理解した。

 それは、メイドさん達から噂を聞いた時から、いやもっと前から思っていたことである。

 だが、それが今核心に変わったのだ。私は、リンドラ様に惹かれているのである。


「リンドラ様が、母に惹かれていたと聞いて、私は少し嫌な気持ちになりました。でも、それはリンドラ様が思っているような不快感ではありません」

「え? 一体、どういうことですか?」

「私は、母に嫉妬していたのです。リンドラ様に思ってもらうなどずるいと」

「なっ……」


 リンドラ様が、私ではなく母に思いを寄せている。それが、私はどうしようもなく嫌だった。

 私は、母に嫉妬していたのだ。そのことを、私は先程理解した。

 そのため、私は結論を出すことができた。私は、リンドラ様のことが好きなのだと。


 私の言葉に、リンドラ様はかなり驚いていた。

 私が突然、告白まがいのことをしたので、それも当然だろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る